JBCCは12月6日、サーバールームやデータセンターといったオンプレミスで運用中の「VMware vSphere」の仮想環境を各クラウドサービスへ移行、構築する「VMware仮想環境 最適クラウド移行サービス」の提供を開始した。Amazon Web Services(AWS)の「VMware Cloud on AWS」、Microsoft Azureの「Azure VMware Solution」、IBM Cloudの「IBM Cloud for VMware Solutions」に対応する。
同社取締役副社長 薮下真平氏は「顧客からは『クラウドは安くなるのか』『事業部門がクラウドを勝手に契約して情報管理が複雑になる』といった声を聞く。われわれはクラウド活用の効果を可視化し、最適なクラウドの組み合わせを提案。顧客と伴走するクラウド運用のパートナーを目指す」と事業の方向性を解説する。
(左から)JBCC 取締役副社長 薮下真平氏、同社プラットフォーム・ソリューション事業部長 大島貴幸氏
クラウドによってコスト差が発生
JBCCはデジタルトランスフォーメーション(DX)フレームワークに基づいた各種サービスで、顧客を支援する「HARMONIZE」を提供してきた。HARMONIZEの10項目で構成された要素には、顧客のITソリューションを支援する「SaaS」、クラウド運用を支援する「IaaS」の分野に今回の新サービスは含まれる。
IaaSの文脈では、クラウドサービスを事前に影響評価してコストを最適化する「Cloud Fitness」、クラウド移行時の事前影響評価にあたる「ITモダナイゼーションクリニック」、クラウドの利用状況を見て、コストの最適化を図り運用を支援するツール「Cloud Health」を提供している。
新たに今回の最適クラウド移行サービスを提供する理由として、同社プラットフォーム・ソリューション事業部長 大島貴幸氏は、「われわれが注目したのはコスト。ベアメタルクラウドでもコスト削減手法があり、(各クラウドベンダーが提供するVMwareソリューションは)顧客の環境と選択したクラウドによってコスト差が発生する。もう1つはクラウド検討に要する時間と顧客負荷。検討時間が足りずにオンプレミスを選択することも。その背景には、既存のシステム(やアプリケーション)がクラウド移行に耐えうるかの判断が難しい」ケースが少なくないからだと説明した。
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新サービスは既存のvSphereで動作する仮想マシンなど顧客の運用環境をITモダナイゼーションクリニックで事前影響を評価し、集約コストが高い仮想マシンはベアメタルクラウドへ、ファイルサーバーなどリソース過多な仮想マシンは各クラウドベンダーのIaaSに振り分けるなど最適に配置できるという。
大島氏は「顧客環境を理解し、ベアメタルクラウドとIaaSを組み合わせることで最適環境を提供する」と説明。すでに新サービスを採用した事例もある。某社はデータセンターのvSphere環境をVMware Cloud on AWSと「Amazon Elastic Compute Cloud(EC2)」に振り分けることで、年間約200万円の運用コスト削減を見込んでいる。
また、別の企業は事業継続計画(BCP)を目的に工場間で動作するオンプレミス環境を冗長化していたが、地震による停電で動作停止し、今後の運用に困窮していた。JBCCは移行先としてAzure VMware Solutionsを選択し、「VMware Horizon View」で運営していた仮想デスクトップ基盤(VDI)環境も「Azure Virtual Desktop」へ移行させ、年額約420万円の運用コスト削減を予期している。
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