開発者向けカンファレンス「Devlopers Summit 2006」が2月9〜10日に開催された。その中の「狛犬(Seasar2)の飼い方教えます。〜企業とオープンソースの生きる道〜」と題するセッションにおいて、企業がオープンソースソフトウェア(OSS)をビジネスに結びつけるうえでの問題などが説明された。

セッションでは、電通国際情報サービス(ISID)で事業推進本部でマネージャを務める飯田哲夫氏とISIDの開発技術センターでシニアコンサルタントを務めるひがやすを氏。ひが氏は、OSSのJava開発用フレームワーク「Seasar2」のチーフコミッタも務めている。
Seasar2は、アスペクト指向プログラミング機能を備えたDIコンテナであり、特定非営利活動法人のSeasarファウンデーションが中心となって開発している。日本で開発されたOSSとして注目されている。ISIDは2005年11月から、Seasar2の商用サポートを開始している。

また2005年12月には、Seasar2の関連ドキュメントの英語化が完了しており、世界を目指すOSSとしても注目を集めている。2006年5月に米で開催されるJavaの開発者向けイベント「JavaOne」で、ひが氏が講演することが決まっている。
セッションの中で飯田氏は、OSSとビジネスとの関係についてさまざまな矛盾があると指摘している。OSSを利用することについて「ユーザーは迅速なサポートとパッチの提供、責任を持ったサポート主体を欲しがっている。それらがあれば、ユーザーは安心して大規模な案件にもSeasar2を使いたいとしている」(飯田氏)。しかし、その一方でユーザー側としては「特定ベンダーにロックインされたくない。特定ベンダーがSeasar2をコントロールするのではOSSの意味がない」(飯田氏)との考えを持っていると説明。
飯田氏は、企業のOSSに対する見方も説明し、「OSSがソフトウェアの領域で一般的になっており、OSSを核にしたビジネスへの試行が始まっている」(飯田氏)ことなどから、企業としてもOSSをビジネスに活かしたいとしている。
「しかし、OSSは企業のビジネスモデルを否定し、顧客の囲い込みもできず、また製品のコントロールもできない。つまり、OSSは収益モデルを描きにくく、経営陣の理解を得ることが難しい」(飯田氏)
ひが氏は、企業に籍を置きながらOSSを開発することの難しさを実体験から、またSeasar2のチーフコミッタという立場から「仕事が終わった後や休日しか開発する時間が取れない。緊急に修正が必要だと思っても、その時間が確保できない」などの悩みがあったことを明かしている。
「企業がオープンソース活動を仕事として認めてくれることは、基本的にはない。そのためにオープンソース活動をさせてくれることが企業にもメリットがあることを積極的にアピールする必要がある」(ひが氏)
そこで、ひが氏は、OSSの開発者自らが知名度を上げれば、企業の知名度も上がり、企業が新入社員や中途社員を採りやすくなるというメリットを挙げる。さらにひが氏は「Seasar2というプロダクトを開発するにあたり、ユーザーの欲しい機能を開発することで、プロダクトの競争力を高めるようにした」とも説明している。プロダクトが有名になることで、企業の知名度も上げるように努力したという。このような努力の結果、ひが氏は「この4月から、仕事の時間の3分の1をOSS開発に使うことが許されるようになっている」(ひが氏)という。
OSSとビジネスを巡る問題について、飯田氏は次のように整理する。
「開発コミュニティとしては、ユーザー志向を維持しつつ、開発リソースを確保したい。企業としてはオープンソースとビジネスを両立させたい。ユーザーとしてはOSSを安心して使いたい」
これらの問題を解決する方向性として飯田氏は、企業は「OSSとの新しい関係を築くことが重要」と説明して、以下の点を挙げる。
- OSSを(顧客の)囲い込みの道具としない
- コミュニティの発展に寄与する
- ユーザーの視点に立つ
- 企業としての境界線をあいまいにする
- オープンなネットワークへの貢献を考える
ここで飯田氏が説明する「企業としての境界線をあいまいにする」というのは、これまでのように企業の内側に開発リソースを抱え込み、ユーザーとも一線を引いてしまうというものではなく、開発リソースやユーザーの一部を企業の内側に入れてしまうことで、企業の境界線をあいまいにしてしまうという考えである。
「つまり、従来型のソフトウェアビジネスのモデルでは駄目。オープンな環境だからこそ実現できるビジネスモデルへの転換が必要になっている」(飯田氏)
その一例として、飯田氏はISIDのOSSに対するビジョンを説明。ISIDでは「オープンソースの積極開発を通じてソフトウェア開発の最適化を実現し、顧客ビジネスにイノベーションをもたらすことを目指す」としている。
これらのビジョンを実現するものとして同社では、Seasarファウンデーションに対して(1)コミュニティへの貢献、(2)ユーザーへの貢献――という2つの点で実際の取り組みを始めている。
(1)のコミュニティへの貢献では、開発リソースの提供、関連ドキュメントの英語化、マーケティングの支援を行っている。(2)のユーザーへの貢献では、サポートサービスの提供、サポートサービスを行うことでユーザーへの安心の提供などが挙げられる。
関連情報
-
ISID、STRAVISの内部統制オプションを発表
ISIDは、連結会計パッケージ「STRAVIS」ユーザー向けに、米国SOX法に準拠した内部統制を構築するためのオプションを発表した。同オプションは、すでに2005年11月21日より販売が開始されている。 - NTTデータイントラマート、国産オープンソースを組み込んだ開発ソフト
- 電通国際情報サービス、Seasar2の商用サポート開始--不具合修正も提供
- 日本オラクルとISID、「Oracle Business Intelligence 10g」と「STRAVIS」を連携
- 電通国際情報サービス
「システム開発」 のバックナンバー
-
VA Linux、クラウド基盤の導入を支援する新サービス「Cloud Quest」を発表
VA Linux Systems Japanは、クラウドコンピューティング技術の活用および基盤構築を支援するサービス「Cloud Quest」(クラウド・クエスト)の提供を開始した。 -
モジラ、携帯ブラウザ「Fennec」の「Android」搭載に意欲
-
グーグル、「Android」用のネイティブコード開発キットをリリース
-
Excelレガシーに1つの解:OSSの帳票ツール「ExCella Reports」などが公開
-
2009年の国内IT市場規模、3.8%減に--IDC Japanが予測
- システム開発 一覧へ »
ZDNet Japan Essential Topic
-
Windows 7の情報満載
MicrosoftのすべてがわかるZDNet Japanの総力特集 -
業務効率化への第一歩はプロセス指向
まずは晩飯づくりからプロセスに分解してみよう!
企画特集
-
セキュリティ&ユーザ事例【SIer Club】
最新のセキュリティ情報と提案事例が満載 -
インターネット上の悪意を未然に防ぐには?
ブラウザに備わったセキュリティ機能を徹底解説 -
そのストレージで仮想化に対応できますか?
メリット盛りだくさんのサンのオープンストレージ製品 -
SOA、BPM、SaaS −今、企業に必要なこと
ビジネス・アプリケーションの今を網羅する特設サイト -
◆エン・ジャパン厳選求人☆毎週更新◆
不況下でも急成長の秘訣とは?注目企業の取組みも公開! -
ストレージメディア特設サイト開設
仮想化環境において最適なソリューションを! -
マネジメントの「コラム」と「コネタ」
今日のキーパーソンは誰? -
ロリポップ!がリニューアル
【第1回】創業者の家入一真氏が語る誕生秘話!! -
今注目の「サジェスト検索」−デモ掲載中
システムのユーザビリティに革命を起こす技術とは -
パンデミック対策特集
2009年のパンデミック発生から再考する事業継続計画 -
中小企業のセキュリティリスクとは?
導入する側・される側 得するセキュリティ製品 -
ESBでIT投資の無駄を劇的に解消する
IBM IMPACT 2009を徹底レポート! -
集積度も性能も、業界最高水準のブレードPC
サーバの実装技術を、シン・クライアントへ応用 -
【徹底対談】運用管理ツールの賢い使い方
市場背景〜仮想化管理までアナリストが解説! -
仮想環境を実現するソリューション特集
仮想化導入時、こんなところ気にしてますか? -
サーバー監視・運用のコストを削減するには
エージェントレス方式を用いたパトロールクラリスで -
■ストレージ容量50%削減保証■
ネットアップによる削減保証キャンペーン実施中 -
サービス・ドリヴン・データセンター
コスト効果の高いデータセンター構築には? -
エンタープライズにおけるSUSEの強み
次世代データセンターの基盤は11だ。
ZDNet Japanからのお知らせ
- ご回答にはCNET_IDご登録が必要です。
-
5. lambda関数を使って
この5分間のビデオは、並列コードをより読みやすくするために、Threaded... -
6. 既知のバグをデバッグする
この4分間のビデオは、並列プログラムエラーが疑われる既知のバグをデバ...
新着企業動向
-
上位サイトのSEO内部対策状況を一覧表示、無料SEOツール「talabagani.jp」を公開
ディーボ -
無料SEO対策セミナー『SEO内製化支援セミナー』09年7月27日開催!
網羅株式会社 -
事例のご紹介 Vol.1 | 情報インフラの全体最適化
EMCジャパン -
SecureCube / PC Check
NRIセキュアテクノロジーズ - 企業動向一覧へ»
幸い今回は弱毒性で大事には至らなかったが、まだ油断はできない。企業活動を停止すると、大きな経済的損害や社会的信用の低下を招いてしまう。
サーバやOS、アプリケーションなどの世界ではオープンソーススタンダードが市場を牽引する現在、ストレージの世界でもオープン化の流れが始まっている。 
