創業以来30年以上もコンスタントに成長を続けてきたSAS Institute。米国の働きやすい企業として常に上位にランクインする同社のCEO Jim Goodnight氏にその秘策を聞くと、「社員を大切にしてきたからだ」と言う。事実SASは、人材を募集すると1つのポジションに約200通もの応募が来るほどの人気企業なのだ。
SASが社員を大切にしていることは、同社の福利厚生施設を見ても明らかだ。ノースカロライナにある本社の敷地内には、一般の保育園の約3分の1の保育料で利用できる社員のための保育施設が2カ所設けられているほか、社員であればいつでも自由に無料で使える体育館、ジム、プール、サッカー場などのエンターテインメント施設、そして病院やヘアサロンまで設置されている。広大なキャンパスの中で、生活のすべてがまかなえるようになっているのだ。
順調に業績を伸ばすSASは、株式市場に上場してはいない。非上場企業であり続けるのも、社員に対する株主からの無駄なプレッシャーを抑え、自由にイノベーションできる環境を与えるためだ。同社のシニアバイスプレジデント 兼 最高マーケティング責任者のJim Davis氏は、「上場すると株主は4半期ごとに結果を求めるようになるが、ソフトウェアは4半期で結果を出すような性質のものではない。4半期ごとに結果を出さなくてはならないような環境でイノベーションができるはずがない」と言う。
社員も同社が未上場であることに対して理解を示しており、「定期的に実施している社員への調査でも、90%は株式公開に反対している」とGoodnight氏。特に、経済状況が芳しくないという現状を考えると「上場企業の社員はいつ首を切られるかひやひやしているのではないか」とGoodnight氏は話す。
こうして社員第一主義を貫き、優秀な人材の確保にも苦労しない同社だが、エンジニアに関しては時として求めている人材を見つけるまでに時間がかかることもあるという。特に、「われわれの子供の世代はIT分野にあまり関心がない」として、Goodnight氏もエンジニア不足に陥るかもしれない不安は常に抱いている。いまのところ米国本社でエンジニア不足に陥ったことはないと同氏は言うが、「将来的にはインドや中国などからエンジニアを確保することがあるかもしれない」と述べている。
これまで順調に成長してきたSASは、今後も同じように成長し続けられるのだろうか。Davis氏は「SASにとっての未来は明るい」と言い切る。その理由は、「データインテグレーションとアナリティックという2つの中核技術を持っているからだ」と同氏。「この2つがあれば、ビジネスにおける課題はほとんど解決できる。だからこそ、経済的に投資マインドが冷え込むような現在でもSASは順調に成長しているのだ。SASのビジネスチャンスは常にあると言っていい」(Davis氏)