日本IBMは12月14日、「IBM Migration Factory」を核とした、2010年における企業基盤の変革に対する取り組みについて説明を行った。
IBM Migration Factoryは、IBMが持つシステム移行に関する25年間のノウハウと、数多くの移行プロジェクトを手がけた経験をもとに、サードパーティー製品を含む30種類以上のツールやガイド、メソドロジによって、ユーザーのシステム移行を支援するもので、ビジネスの成長と効率化を可能にする「ビジネス」、パワフルで拡張性が高い「テクノロジ」、新たなテクノロジへの移行を図る「移行」という3つの観点からソリューションを提供する。
IBM Migration Factoryは、「ファクトリ」と名が付くものの、何かを製造する工場ではなく、固有の製品を指すものでもない。日本IBM専務執行役員、システム製品事業担当のPaul Moung氏は、「IBMの能力や知識を、ユーザーが利用、共有できるサービスおよびサポートを指す名称であり、そのサービスはワールドクラスの専門家によって提供される。半分以上は無償で利用してもらえるものである」と、その位置づけを説明する。
過去に手がけた、5年間で5000以上の移行プロジェクトの中には、ヒューレット・パッカードやサン・マイクロシステムズ、EMCから、IBMのサーバ、ストレージに移行する例などがあるとしており、「すでに日本においても、25社のユーザー企業がIBM Migration Factoryを活用しており、Japan Migration Factory Programに関しては、毎月40以上の問い合わせがある。これまでの経験をもとに我々が提案する価値には、自信を持っており、日本のビジネスパートナーとの連動も強化していく」(Moung氏)という。
また、これを実行する部門として、日本市場向けに「Migration Center of Competency(MCoC、移行総合技術センター)」を2009年10月23日付けで設置。数十億円規模の投資を行っている。さらに、新設時には70人規模だった人員を、12月には約2倍の150人に増員。さらに需要に合わせて人員を増やし、社内およびサードパーティーのツールを組み合わせた、最適な移行サービスを提供するという。
「日本の多くのユーザーは、ITベンダーに明確な製品および技術ロードマップを示してほしいといっている。これまでにロードマップが中断されたり、それにより投資が無駄になったりといった経験をしているからだ。また、ITコストの削減や、IT投資価値の最大化、市場競争力を維持するための投資がより強く求められており、企業は新たなアプリケーションを活用し、膨大なワークロードにも対応する必要がある。こうした要求は確実に増えている。一方で、日本のCIOは、自社のIT部門における今後3年間の重要な課題として、グローバル化と人材スキルをあげており、こうした課題を解決しなくてはならないと考えている。私は30年以上、IT産業に関わっているが、そこで学んだのはタイミングが大変重要であるということである。今はこうした課題を解決するための重要なタイミングである」(Moung氏)
日本IBMでは、様々なワークロードに対して最適なソリューションを提供できるように、スケールアップおよびスケールアウトのサーバ製品をラインアップしている。POWERプロセッサをロードマップ通りに発表していることなどで、ユーザー企業はロードマップに基づいたIT構築を行え、投資を保護できるとしたほか、Dynamic Infrastructureやクラウドコンピューティングなどの、先進テクノロジを取り込んだITロードマップを提示していることで、新たな技術への対応を明確に示している点が優位性になると強調した。
また、「ITインフラだけをとらえると、日本はまだ新興市場だといえる。新たなアプリケーションを利用するにも、他の国に比べてインフラ環境が遅れている」として、「ビジネスの競争力強化のためには、適切なインフラが必要であり、この点でもIBMは日本の企業の変革を支援していく必要がある」などと語った。
日本IBMでは「2010年はIBMへ、イ・コ・ウ」をキャッチフレーズに、MCoCを中核にしたシステム移行を促進していく考えだ。ユーザーに対するアセスメント結果に基づくパフォーマンスの保証のほか、移行案件発掘件数上位10社のパートナーに対しては、米IBM Migration Factoryへの研修ツアーの実施といったインセンティブの提供、ビジネスパートナーやIBMの営業部門を対象としたシステム移行に関する教育、情報提供、プロモーションイベントなども展開していく考えだ。