レッドハットCTO、日本での開発施設設置を示唆

藤本京子(編集部)

2005-12-06 22:20

 レッドハットは12月6日、米Red Hat最高技術責任者(CTO)Brian Stevens氏の来日に伴い、同社の方向性についてプレス向け説明会を開催した。Red Hatでは、企業向けLinuxとなる「Red Hat Enterprise Linux」のサブスクリプション数が100万に達したが、今後の更なる成長は「新規顧客を獲得すること、成長率の高い地域に積極的に投資すること、ソリューションの範囲を拡大すること」などにあるとした。

 2006年はまず、「新規顧客の獲得に注力する」とStevens氏は述べている。これまでEnterprise Linuxの顧客は一般企業が中心だったが、「これからは官公庁や中小企業もターゲットとしたい。そのために、官公庁担当の専属チームを結成した。また、Enterprise Linuxの中小企業版やソリューションパッケージ、マーケティングプログラムも提供したい。パートナーへの支援も強化する」と話す。

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Red Hatの方向性について説明する同社CTOのStevens氏

 Stevens氏はまた、アプローチする地域を拡大することでも新規顧客の獲得が可能だとして、「ブラジル、ロシア、インド、中国といった、いわゆるBRIC諸国へ積極的に投資する」としている。具体的には、新規オフィスの設立や、ローカライゼーションを予定している。

 「新興市場ではレガシーシステムが存在しないため、Linuxが最初のプラットフォームとして選ばれることも多い。そのためこうした地域では、他の地域よりLinuxの成長率が高い」(Stevens氏)

 次に注力する分野としてStevens氏は、「Linuxのオペレーション効率を向上させるためにも、コアプラットフォームを拡張させる」とした。つまり、Linuxに機能拡張を施し、新しいアプリケーションにも対応させることで、ソリューションの範囲を拡大、収益化に結びつける。そのため、パートナーとの関係を強化し、ミッションクリティカル分野での採用を拡大させるとした。

 またStevens氏は、顧客がサービスを導入する際のテストや認証などを代行するサービスを提供し、迅速なソリューションの展開を目指している。こうしたサービスを提供することで、同社ではビジネスチャンスと収益の拡大を見込んでいる。

 開発の方向性については、Red Hatが出資し、無償版「Red Hat Linux」の開発を委ねた組織「Fedora Project」と共同開発することで、「新機能を迅速にリリースしていきたい」とStevens氏。Fedora Projectにより、「Linuxを無償で使いたいというコミュニティの希望に応えられるだけでなく、エンタープライズソリューションに適したテクノロジが短期間で生まれてくる」と同氏は述べている。

 Stevens氏はまた、「Fedora ProjectはEnterprise Linuxの拡張に欠かせないものだ」と話す。現在Fedora Projectにて公開されている機能は、仮想化機能や多層型セキュリティ、ストレージ専門ソフトウェアを提供するSistina Softwareの買収によって入手したクラスタファイルシステム、Netscapeの技術を買収することで入手したディレクトリサービスや認証管理システムなどがあるが、こうした機能は2006年後半にリリースされるEnterprise Linuxバージョン5にて実装される予定だとしている。

 サブスクリプション数が順調に伸びているRed Hatでは、開発部隊も拡張しているが、Stevens氏は今回の来日で「日本のOEMベンダーに会うことも目的のひとつだった」としている。その中で、「日本における共同開発施設を設立することについても話し合った」とStevens氏。すでに同社は、2003年12月に富士通と共同でRed Hat社内に「共同開発推進室」を設立するなどしてハードウェアベンダーとの協業を進めているが、「このような共同施設を日本でも設立したいと」とStevens氏は述べた。

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