マイクロソフト、Windows Server 2008 R2が「単なるリビジョンアップではない」理由を説明

ZDNet Japan Staff

2009-08-06 18:47

 既報の通り、マイクロソフトは8月6日、次期サーバOSである「Microsoft Windows Server 2008 R2」の製品体系と発売日を発表した。ボリュームライセンスでの提供は2009年9月1日より、パッケージ製品の提供は10月22日より開始される。

 同製品は6つのエディションから構成される。基幹業務システム向けのスケーラビリティを備え最大16ノードのクラスタ構成に対応した「Datacenter」、中小規模から大規模企業向けの仮想化環境構築に最適化された「Enterprise」、ファイル共有やセキュアなインターネット接続など日常業務の効率化に対応した機能を備える「Standard」、OEM経由で提供される中小企業向けの「Foundation」、Itaniumプロセッサ向けの「for Itanium-based Systems」、IIS 7.5をベースとしたウェブサーバ構築専用OS「Windows Web Server 2008 R2」である。(各エディションの価格については、記事末の表を参照)

五十嵐光喜氏 マイクロソフト、サーバープラットフォームビジネス本部業務執行役員本部長の五十嵐光喜氏

 同日に行われた発表会では、マイクロソフト、サーバープラットフォームビジネス本部業務執行役員本部長の五十嵐光喜氏が、「製品名を見ると、前バージョンから大きな変更がないように思われるかもしれないが、Windows Server 2008 R2は単なるリビジョンアップではない」とし、前バージョンの登場以降に進化したハードウェアの能力を使い切るための、さまざまな基本機能の強化が加えられた製品であることを強調した。

 具体的には、近年一般的になったCPUのマルチコア化や64ビット化、消費電力削減のための技術、仮想化技術への対応が進んだという。五十嵐氏は、機能強化のポイントとして「仮想化」「セキュリティとコンプライアンス」「生産性の向上」、そしてそれらのベースとなる「データセンタープラットフォームとしての基本機能向上」を挙げ、それぞれについて説明を加えた。

 まず、「データセンタープラットフォームとしての進化」については、消費電力削減のための「CoreParking」機能が挙げられた。この機能を利用することで、処理に当たって必要なCPUコアのみを稼働するといった制御が可能になり、システム全体にかかる負荷が低い状態の時に、大幅な消費電力の削減が可能になったとする。また、最大256コアにまで拡張されたマルチコア対応に加え、スクリプティング環境である「PowerShell 2.0」によって、すべてのサーバ機能の自動制御が可能になったという。

 「仮想化プラットフォームとしての進化」については、Hyper-V 2.0で新たに追加された「Live Migration」が目玉だ。Live Migrationによって、稼働中の仮想マシンを停止することなく、物理サーバ間で移動できるようになる。VMwareのVMotionといった競合他社の技術では既に実現されていたものだが、これを標準機能として組み込むことで仮想化市場におけるシェア向上を狙う。また、デスクトップ仮想化の分野でもOS標準機能としてVDIに対応。RDP 7.0によるパフォーマンス向上をうたい、シンクライアント分野での活用を促したい考えだ。

 「セキュリティ/コンプライアンス基盤としての進化」としては、File Classification Infrastructure(FCI)の標準装備により、企業内で扱われるファイルの機密度に応じた分類とRMS連携による文書保護の自動化が可能となっている点が挙げられた。そのほか、同時期にリリースされる次期クライアントOS「Windows 7」との組み合わせによる新機能として、簡易VPNとして利用できる「DirectAccess」機能、支店等に置かれたサーバでキャッシュを構成して効率的なファイルアクセスを実現する「BranchCache」機能などによるユーザーの生産性向上についても触れられた。

「2倍、3倍、4倍」の販売戦略

 続いて五十嵐氏は、Windows Server 2008 R2の販売戦略として、以下の3つを挙げた。

 1つ目は、今後のさらなる伸びが期待されるx86環境での仮想化の市場を、現在の「2倍」に拡大するため、Windows Serverの仮想化機能である「Hyper-V」のエンジニアを今後、1万人にまで増加させるというもの。

 2つ目は、256コア対応、CPU単位のライセンスで仮想環境については無制限で構築可能な「Datacenterエディション」のメリットを強く打ち出し、Windows Serverによるデータセンター、サーバ統合を推進することで、同エディションの対前年度販売成長率を「3倍」にするというもの。五十嵐氏は「リーズナブルなライセンス体系を導入し、購入形態の敷居を下げることで、テスト環境やステージングサーバとしての利用ニーズに応えられる」とした。

 3つ目は、中小規模市場に対するサーバの出荷構成比率を現在の「4倍」にするというもの。同社の調査によれば、欧米諸国やワールドワイドの比率(約18〜23%)と比較して、日本における中小市場向けのサーバ出荷構成比率は極めて少ない(約5%)という。この状況に対して、15ユーザー以下の中小規模企業を対象にOEM経由で提供される「Foundation」をエディションとして定番化し、強力に推進していくという。この施策により、現状日本で約5%(3万台/年)前後で推移している状況を、「少なくとも3年以内に20%程度(約12万台)にまで引き上げる」(五十嵐氏)とした。

中小サーバ市場を4倍に 低価格なOEM版である「Foundation」を定番化することで、サーバ未導入の企業が多い中小規模市場での導入率拡大を狙う

 製品のリリースに合わせて、ソフトウェア、ハードウェア、ソリューションを提供するパートナー22社が「Windows Server 2008 R2導入支援パートナー」として、自社製品やソリューションの新OS対応を進めていることが発表された。

河部本章氏 パートナーの代表として登壇した、富士通IAサーバ事業本部長の河部本章氏

 発表会にはパートナー代表として、富士通、IAサーバ事業本部長の河部本章氏が出席。Windows Server 2008 R2に期待する市場へのインパクトとして、「既存IAサーバ市場の活性化」「大規模システムへの適用拡大」「仮想化技術による新市場の掘り起こし」「Foudationによるローエンド市場への適用拡大」を挙げた。富士通では、サポート体制強化のため2009年7月に同社内に「IAサーバシステムセンター」を設置。マイクロソフト認定技術者を今後3年間で2000名増強するほか、同社のIAサーバブランドである「PRIMERGY」のWindows Server 2008 R2への対応を、現行機種を含め2009年9月1日より順次進めていく計画だ。そのほか、Foundationを搭載した低価格サーバの積極的な投入や、ミドルウェア分野でのマイクロソフトとの協業などの相乗効果で、「2010年には、PRIMERGYの世界50万台、日本20万台の販売を目標とする」とした。

「Windows Server2008 R2」製品体系
エディション 実行可能な仮想インスタンス(仮想OS)数 参考価格 (税別)

ボリューム
ライセンス

パッケージ
Windows Server 2008 R2 Datacenter
無制限
46万3000円
Windows Server 2008 R2 Enterprise
4
45万4000円
72万円
(25CAL付き)
Windows Server 2008 R2 Standard
1
14万円
18万8000円
(5CAL付き)
Windows Server 2008 R2 Foundation
(OEM経由のみ)
Windows Server 2008 R2 for Itanium-based Systems
無制限
46万3000円
Windows Web Server 2008 R2
7万7500円
8万5800円

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