オフィスソフト市場におけるマイクロソフトのシェアが拡大するに伴い、その他のオフィスソフトベンダーは、撤退や縮小した市場でのビジネスを余儀なくされた。
1999年、サン・マイクロシステムズ(サン)はオフィスソフトにおけるマイクロソフトの独占的なシェアの切り崩しを目的に、ドイツのオフィスソフトベンダーであったStarDivisionを買収。2000年には、そのソースコードを公開し、コミュニティの手によってオフィスソフトの開発を行う「OpenOffice.orgプロジェクト」が始動した。サンでは、そのプロジェクトの成果を元に、独自のテンプレートやフォント、サポートなどを企業向けにパッケージ化し、「StarSuite」(海外名は「StarOffice」)の名称で提供している。
最新バージョンの「StarSuite 8」は、オープンソースプロジェクトの最新の成果である「OpenOffice.org 2.0」をベースとした製品で、ワードプロセッサの「Writer」、表計算ソフトの「Calc」、プレゼンテーションソフトの「Impress」、図形描画ソフトの「Draw」、データベースソフトの「Base」から構成される。なお、コンシューマー向けの製品はソースネクストが「スタースイート8」および「超五感プレゼン」(Impressを単体で製品化したもの)という名称で販売している。
その出自からも明らかだが、StarSuiteは常に「Microsoft Office」(MS Office)のオルタナティブとしての立場を明確に打ち出してきた。サンの東京ソフトウェア本部製品開発統括部技術シニアアドバイザリーである石村直之氏は、「StarSuiteの開発におけるトッププライオリティは、常にMS Officeとの互換性の向上だ」と語る。MS Officeのファイル形式との互換性の向上に加え、ユーザーインターフェース(UI)の互換性、オフィスソフトとして必要と考える基本機能における互換性の向上を目指したバージョンアップが続けられている。
StarSuite 8も、スイート全体としてMS Officeとの互換性が向上している点がアピールポイントだが、特にプレゼンテーションソフトである「Impress」について、それが顕著だという。PowerPointのスライド効果を全種類サポートするほか、グラフの再現性やカスタムシェイプの扱いなども大幅に改善された。また、MS Officeに付属するフォントと互換性の高い、RICHOフォント13書体をバンドルすることで、画面表示や印刷時におけるレイアウトの再現性も高めているという。
バージョンアップのたびに新たな機能が追加され、肥大化するMS Officeに対するアンチテーゼとして、一般的なオフィスユーザーが必要とする機能を、より低コストで提供することにより、ユーザーの獲得を目指すという方向性は、常に一貫している。
また、石村氏は、次期MS Officeの主要なアプリケーションで採用される新たなUIが、さらなるStarSuiteユーザーの増加を促す可能性もあるのではないかと指摘する。「UIが変更されたことによって、バージョンアップをためらうユーザーがいるとすれば、現行バージョンのMS OfficeとUIが近く、今後も継続的に機能強化が行われるStarSuiteに魅力を感じるかもしれない」(石村氏)
サンが提供するStarSuite 8 Enterprise版の価格は5ユーザー購入時で1ユーザーあたり1万4000円だ。サンのプロダクトマーケティング本部、シニア・プロダクトスペシャリストである高松新吾氏は「初期導入コストだけでなく、将来的なデータフォーマットの互換性の保証や、保守ユーザー契約による最新バージョンへのアップグレード保証などにより、全体的なTCOの削減も行える」とする。現状、マクロ言語に関しては、MS OfficeとStarSuiteの間に互換性がないが、これについてもEnterprise版で変換支援ツールを提供することによって、移行の手間を低減させているという。