日本、中国、韓国の3カ国でオープンソースソフトウェア(OSS)の普及に向けた活動を続ける北東アジアOSS推進フォーラムが、福岡で開催された第5回目の会合にて、各ワーキンググループ(WG)の活動内容を報告した。今回は、人材育成について検討するWG2と、標準化および認証研究を行うWG3の活動報告を紹介する。
人材育成の需要と供給を見極める
WG2の活動報告をしたのは、韓国Konkuk UniversityのDoohyun Kim氏だ。Kim氏は、「WG2の主な目的はOSSの人材育成を活性化することだ」と述べ、重要視すべき項目として、人材育成のためのマスタープランを作り、教育コースやトレーニング、教材、評価基準、資格などを用意することを挙げている。
人材育成にあたりWG2では、「Joint Curriculum(共同カリキュラム)、Joint Certificate(共同検定)、Joint Contests(共同コンテスト)の3つのJCに注目し、活動している」とKim氏は話す。同時に、各国のOSSの資格について現状を調査したという。
その結果、「3カ国共同OSS人材育成プログラムのバージョン1.0を発行するに至った。また、これまでの会議を通じて得たノウハウを基にチャーターを作った。さらに、各国の企業が求めているOSSの専門スキルに対するニーズと、各教育機関で提供されているカリキュラムの現状を確認することで合意した」とKim氏。
この3カ国共同OSS人材育成プログラム バージョン1.0では、「人材育成に関連する情報を共有することや、協力案を作成すること、人材交流を活性化することなどが目的だ」とKim氏。共同カリキュラムについては3カ国が協力して作り上げ、コンテストや資格などは各国の事情と予算に基づいて独自に計画するとしている。
活動の中でも重要度が高いのは「専門スキルに対する企業側の需要と教育機関で提供されるカリキュラムの現状の確認だ」とKim氏は主張する。この現状を確認した上で、WG2では教育コースのパイロットプログラムを立ち上げる。パイロットプログラムを通じて、本格的なカリキュラムの計画を立てる予定だ。
入力エンジンの標準化とウェブ相互運用性を目指す
WG3の代表として報告を行ったのは、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)オープンソースソフトウェア・センター長の田代秀一氏だ。田代氏はまず、WG3の中にある2つのサブワーキンググループ(SWG)について説明した。
SWGのひとつは、入力メソッドエンジンのサービスプロバイダーインターフェースの標準化に関するSWGだ。これは、各国の言語を入力する際の変換システムをアプリケーションにどのように結びつけるのかについて検討するグループだ。もうひとつのSWGは、ウェブの相互運用性の調査および検討を行うSWGだ。
入力エンジンに関するSWGについては、「エンジンがどんな特徴を持つべきかというリストについて3カ国で合意に至った。また、インターフェースの中でどのようなデータが流れるのかというイベントフローの仕様についても合意した」と田代氏。12月末までには仕様の草案をまとめる方向で、最終的な仕様書は2007年の中頃を目指して作成する。
ウェブ相互運用性についてのSWGは、2006年夏に新しく結成されたグループだ。まずはSWGの目的とスコープにおいて合意したというこのグループでは、現在基本的な作業項目について議論しているところだ。
このSWG内では2つのプロジェクトが立ち上がった。まずは現状のウェブの状況や問題を洗い出すプロジェクトだ。田代氏は、このプロジェクトの計画として、「2007年3月までに報告書の最初の草案を作成し、9月には完全なものとして発行する。2008年には最終版を北東アジアに向けて発行する」としている。
SWG内のもう一方のプロジェクトは、ウェブの相互運用性を保つためのガイドラインをウェブ開発者に提供するというものだ。このプロジェクトについては、「2007年6月までに最初の草案を作成し、2008年6月には最終版を発行する」としている。