洋書、和書、専門書などの書籍販売で知られる丸善が、マイクロソフト初の業務パッケージソフト「Dynamics CRM」を国内企業として初めて導入した。「初モノ」はどうしても敬遠される傾向にある中で、同社があえて導入に踏み切った理由は何か。SI企業出身で、丸善の専務取締役 教育・学術事業本部長を務める土岐勝司氏に聞いた。
基幹業務を支えるプッシュ型営業
丸善といえば書店というイメージが先行するが、売上げ的には書籍販売である店舗事業は3割強に過ぎない。それに対し、同社が中核事業と位置づける教育・学術事業は売上の6割弱を占めている。そして、残り1割が出版事業と店舗内装事業といった具合だ。
土岐氏は言う。「丸善は書店だと思われがちだが、実は大学向けのビジネスが大きい。大学向けに洋書、和書、専門書などを販売するとともに、ソリューション事業も展開している。学習の進捗管理システムや、大学の学部創設にあたってのコンセプト作りから教室のデザインなどまで手がけている」
さらに、大学の図書館のうち70館は丸善がBPO(Business Process Outsourcing)しているという。大学で本を借りようとしたら、カウンターの人は丸善の従業員ということもある。このように、大学向け事業が丸善の基幹事業なのだ。そして、この基幹事業を支えるため、同社は全国に約250人の営業担当者を抱えている。
「現在、日本には4年制大学が約750校、短期大学が約430校あり、この合計約1200に上る大学や短大を毎日当社の250人の営業がくまなく回っている。いわゆるプッシュ型の営業だ。大学向けに250人の営業担当者がいる会社は、日本で丸善だけだ」(土岐氏)
現在、大学側も少子高齢化の中でし烈な競争の中に置かれている。18歳人口が120万人となり、有名大学でも生き残りをかけてさまざまな対策を講じている。当然、丸善としてもこうした要求に合わせたソリューションを提供しなくてはならない。
つまり、営業担当者の日常の活動が丸善そのものの生命線を支えているといっても過言ではない。この営業の支援ツールとして同社はDynamics CRMの導入を決めた。
「この250人の営業は、地域によって担当がわかれている。一方で、全国には1200の大学がある。営業の仕事を定量化して見るためには、スケジュール管理ができることと、それに連動するCRMが必要だった」