安全な環境下で実現できるライトなコミュニケーション--バリューコマースのChatter導入奮闘記

井村禎章

2010-12-03 12:00

 バリューコマースは、アフィリエイトサービスをビジネスの中心とする企業だ。個人のブログなどで同社のアフィリエイトサービスを利用する読者も多いのではないだろうか。今回はそのバリューコマースがどのような経緯で「Salesforce Chatter」を導入し、運用しているのかをお届けする。

定着していたIMの文化

片岸氏 バリューコマース 最高業務執行責任者 片岸幹夫氏

 同社がChatterの利用を始めたのは、2010年5月中旬のこと。バリューコマース 最高業務執行責任者の片岸幹夫氏は、「Salesforce.comのイベントでChatterを初めて見て、“いいな”と思ったのがきっかけ」と数カ月前を振り返る。プライベートベータプログラムには申し込んでいなかったが、「何とかならないのか、と無理を言った」と片岸氏は笑う。実際に何とかしてもらい、同社でのChatter活用が始まった。

 Chatterのどこに魅力を感じたのだろう。「直感的に、TwitterやFacebookに出会ったときと同じような印象を受けた。ライトなコミュニケーションを安全な環境下で実現できる便利なツールと感じた」(片岸氏)。すでに営業部門の全スタッフがSalesforceを利用しており、Chatterを使うのに追加コストがかからないことも大きな推進要素になった。

 当時、同社にはすでにインスタントメッセンジャー(IM)の文化があり、社内では自社開発したIMで業務に関する情報をやり取りすることもあった。短文でリアルタイムに情報を交換することに、多くの社員が慣れていたのだ。プライベートでTwitterやFacebookを活用している社員も多く、Chatter定着化へのハードルもそれほど高くはなさそうだった。

 ベータ版を使えるようになるとすぐ、Salesforceの全ユーザーがChatterを使えるようにした。発言ルールなど、あえて特別な規則は定めなかったが、アイコンは初期のものでなく、オリジナルのものを使うよう促した(Chatterは、Twitterのように初期アイコンが設定されていて、それを別の画像に変更できる)。そして、オペレーション部門から発信する業務連絡は、メールではなくChatterを使って社内に通知することにした。自然とChatterを見てもらい、慣れてもらうのが目的である。

鮮度の高い情報を共有できる価値

 Chatterが浸透するに従い、その便利さを実感できる事例が生まれてきた。たとえば、次のようなケースだ。ある営業スタッフが、「PCメーカーがタレントとタイアップしたキャンペーンを実施する」という情報を入手した。さっそくChatterで情報を発信したところ、それを見た媒体担当営業が大手媒体と迅速に交渉を進め、キャンペーン開始時に大がかりなプロモーションを実施することができた。

 このケースを見ると、Chatterの2つのメリットがクローズアップされてくる。まず、セキュアであること。不特定多数に情報を見られてしまう環境では、こうした情報を発信することはできない。そして、社内のChatterユーザーであればだれもが見られること。メールで広告営業部門内の数人と情報共有するだけでは、媒体営業部門とのコラボレーションは期待できない。とはいえ、全社員宛のメールを頻繁に使うと情報過多になってしまう。そこを埋められる点に、Chatterの価値があるわけだ。

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