2006年5月22日に開催された「ZDNet Japan エンタープライズサーチカンファレンス」では検索ソリューションを提供する企業6社が、エンタープライズ・サーチ・プラットフォーム(ESP)技術の最新動向をはじめ、効果的な導入方法や活用事例など、さまざまな切り口でその可能性を紹介した。
このカンファレンスでは、参加企業の1社であるMicrosoftが、4日前に米国で発表されたばかりの検索ソリューション「Windows Live Search」をはじめとする関連製品群のデモンストレーションを紹介した。この検索テクノロジは、同社の会長兼チーフソフトウェアアーキテクトであるBill Gates氏が直々に発表するほど熱のこもった製品だ。
そこで、Microsoftの製品管理担当ゼネラルマネージャーであるDerrick Connell氏、およびMSN Search & Portal製品プランニング担当ディレクターであるFrederick Savoye氏に同社の検索テクノロジ戦略について話を聞いた。
--エンタープライズサーチカンファレンスでは、「エンタープライズサーチ」と「インターネットサーチ」の違いが論点のひとつでした。マイクロソフトでは、この2つのサーチをどのように定義していますか。
Connell 「エンタープライズサーチ」と「インターネットサーチ」は、全く違うものではなく、非常に共通点は多いと思います。エンタープライズでも、コンシューマでも、問い合わせをして、その答えをもとにアクション(行動)するという点では、どちらも同じものです。
違いは、探している情報の質の違いです。コンシューマの場合には、とにかく情報が欲しいということが根底にありますが、エンタープライズでは具体的なニーズに基づいて検索を行います。
たとえば、ある特定の業務に関わる情報にアクセスしたいとか、ある特定の分野の専門家と話しがしたいとか、ある特定の分野のコンテンツがほしいなどのニーズです。
--インターネットサーチでは、同じ検索ワードであれば誰が検索しても結果は同じです。一方、エンタープライズサーチでは、経営者の検索結果と新入社員の検索結果が同じでは困ります。こうした点も違いのひとつだと思いますか?
Connell 本来であれば、インターネットサーチであっても、エンタープライズサーチであっても、違う検索結果であるべきだと思っています。ですから、パーソナルサーチという考え方やユーザーの意図というものが重要になってくるのです。
逆に、エンタープライズサーチでは、検索をするためには、システムにログインしなければなりませんので、個人を特定し、権限に応じた検索結果を返すことはそれほど難しくありません。
--技術的には検索エンジンの部分は同じで、検索用のアプリケーション部分の違いなのですか。
Connell その通りです。まずアーキテクチャに関してですが、プラットフォーム自体は広範で複雑な形であり、その中にエンタープライズ向けの機能と、インターネット向けの機能があります。たとえば、クローラやインデクサなどの機能はそれほど違いはありません。
デスクトップサーチに関しては、プラットフォームの部分は似ていますが、グループポリシーの部分が若干異なります。最大の違いは、検索用のアプリケーションの部分で、エンタープライズ向けだけの要件が多く含まれています。
--検索エンジンは同じということですが、検索エンジンには英語や日本語といった言語による違いはあるのでしょうか。
Connell 検索エンジンには、大きく3つの要件があります。まず、自分のしたい問い合わせができるか、問い合わせに対して関連性の高い答えが返ってくるか、その答えでアクションできるかどうかです。
この中で、言語に関わるのは、最初の問い合わせの部分ですが、言語の違いだけではなく、言語による意味の違いも理解しなくてはなりませんので、さらに複雑です。たとえば、英語が理解できても意味が分からなければ質問の正しい答えを見つけ出すことはできません。
マイクロソフトでは、これまでにも“言語”に対するさまざまな投資を行ってきました。東京にも検索エンジン担当のチームがあり、日本語へのローカライズやフレーズマッチングなどの機能の開発を行っています。また、“ユーザーの意図を理解する”という研究にも同じく多くの投資を行っています。
--マイクロソフトのデモは最先端の技術だとは思いますが、製品として見るとGoogleやOracleなどに比べ、若干遅れているような気がしますが……。
Connell マイクロソフトの検索分野におけるポジショニングについては常に正直におはなししています。我々がこの分野に取り組み始めたのは2年ほど前ですから、他社に比べれば確かに遅いスタートといえるでしょう。しかし、短期間で多くの仕事をしたという自負があり、現状には満足しています。
今後、3カ月、6カ月と時間が経過していくと共に他社との差も縮まっていくと思いますし、場合によっては追い抜くことも可能だと思っています。個人的には、今は追いかける立場を楽しんでいます。