Oracleの創業者で最高経営責任者(CEO)を務めるLarry Ellison氏が日本で公式の場に姿を見せたのは1998年以来のこと。同氏は「Oracle OpenWorld Tokyo 2006」(OOW 2006)の基調講演にて、企業向け検索エンジン「Oracle Secure Enterprise Search 10g」を発表したほか、ハイパフォーマンスで信頼性の高いシステムを低コストで提供するにはグリッドコンピューティングが鍵となること、また「イノベーションと買収の組み合わせでOracleはより価値の高いものを提供し、来年度は150億ドルの売上を達成する」と述べていた。
講演終了後には記者の前に登場し、時に笑顔を見せつつ落ち着いた表情で記者の質問に答えたEllison氏。その質疑応答の主な内容をお伝えする。
--Secure Enterprise Searchを発表したが、これはOracleの業績に貢献するものとなるのか、もしくは検索市場に参入するというブランド作りのためのものなのか
Ellison氏は、すべての質問に丁寧に答えていた |
これは商用の製品なので、もちろん収益につながるものだ。同時に、Oracleが検索のイノベーターとなるにあたって重要な製品とも言える。これまで、インターネットで公開されている情報を検索する技術は存在していたものの、機密データを検索するための安全な仕組みがなかった。このような史上初の製品を提供することで、Oracleが新分野でも力があるということが証明できる。Oracleが今後も成功するためには、革新的であり続けなくてはならない。
--ソフトウェア企業の統廃合が続いているが、もうこの動きは終わったのだろうか
まだ終わってはいない。ソフトウェア業界の統廃合は、まだ初期段階が終結しつつある状況に過ぎない。ソフトウェア企業の数は、自動車関連企業の数よりもずっと多い。ソフトウェア業界が成熟すれば、企業の数は今より少なくなるだろう。つまり、コンソリデーションは今後も続く。
--現在Oracleは、データベース分野ではナンバーワンだが、ミドルウェアではIBMに次いで2位、ERPでもSAPに次いで2位となっている。ナンバーワンのソフトウェア企業になるためにはどうすればよいのか
確かにIBMはミドルウェア分野で1位だが、成長率はOracleの方が高い。今後もイノベーションと買収、そしてグリッドを進めることで、1位のミドルウェア企業になれると考えている。
1位になることがなぜ大切なのか、それはエンジニアに多くのリソースをつぎ込めるからだ。販売数が多くなれば、価格を下げることもできる。つまり、1位であることは顧客にもメリットをもたらす。ただし、すべての分野で1位になれるとは思っていない。
--Oracleは今後もライセンス料が主な収益源となるのか
買収したSeibel SystemsのCRM OnDemandは購読料収入となっている。ただし、現在のOracleのビジネスの大半は、新規ライセンス料またはライセンスの更新、つまりサポートだ。この部分の売上は70億ドル以上にのぼる。
--オープンソースソフトウェア(OSS)が商用ソフトウェアに与える影響についてどう思うか
OSSが商用ソフトウェアに置き換わることはない。OSSに対しては、開発者がボランティアで一生懸命開発に貢献しているのだという神秘的な概念を持つ人がいるが、Linuxを開発したのはIBMであり、Intelであり、Oracleなのだ。OSSが成功するための条件は、大企業がOSSに投資しなくてはならない。Linuxがうまくいっているのも、IBMやOracleが投資し、サポートしているからだ。Linuxに問題が起こった際、Oracleにサポートを求めて電話がかかってくることもあるのだ。
とはいえ、OSSの可能性については信じている。Oracleは、OSSが勝つと思われる分野を見極め、選択しながらOSSに関わっていきたい。ただし、ERPシステムのOSSが登場することは、今後もあまり考えられない。
--サービス指向アーキテクチャ(SOA)についてどう考えているか
SOAは重要な技術だし、OracleでもSOAにコミットしている。1000個のアプリケーションを統合できる魔法の技術ではないが、統合の手助けにはなる。Oracleでも積極的にSOAを推進し、リスクをかけてSOAへの移行を進めている。新しい技術はリスクが高いかもしれないが、もっと大きなリスクは移行しないことだ。