「チャンスがあれば先手必勝だし、そうでない場合にはじっくりと腰を据えた戦略を遂行する。(今年、挑戦しようと思っている囲碁と同じく)常に次の手を考えがら戦略を柔軟に変化させることが必要になる」--日本オラクルの代表取締役社長 最高経営責任者である新宅正明氏は、自身のビジネスにおける信条をこう語る。
ここ数日はライブドアショックにより株価の低迷も危惧されたが、その不安も一段落。2005年から2006年にかけての株価や経済動向における数字が示すとおり、日本経済は引き続きポジティブな基調にある。新宅氏は、「現在は、ビジネスを加速していく時期。これまでは経済的にも耐える時期だったが、2006年は攻めの年にしなければならない」と話す。
この言葉が示すとおり日本オラクルは、3年ぶりとなるイベント「Oracle OpenWorld Tokyo 2006(OOW 2006)」を今年3月に開催する。「OOW 2006の開催は、オラクルにとってひとつのゴールであり、新たなスタートでもある」と新宅氏。2006年は、2003年から取り組んできた中期経営計画「Oracle Japan Innovation 2003」のゴールの年であり、また新たなスタートの年でもある。その幕開けを飾るのイベントがOOW 2006だ。
「日本オラクルでは、2003年より3カ年の中期経営計画を推進してきた。その計画も、あと半年足らずを残すのみとなったが、当初の目標は概ね達成し、次のステップへと向かっている。そこで目指すのは、企業のプロセス再生と価値創造というサイクルを加速していくことだ」(新宅氏)
つまり、OOW 2006のテーマ「TURNAROUND JAPAN 〜事業再生とITの役割〜」における“TURNAROUND(方向転換)”に込められた思いこそが日本オラクルが目指す次のステップといえる。新宅氏は、「事業再生を実現するための次世代システム構築におけるOracle製品の役割とはいかなるものかを啓蒙していくことが、日本オラクルの今後の重要な取り組みであり、OOW 2006のテーマとなっている」と言う。
「道具はすでにそろっている。そこで道具を紹介するのではなく、その道具で何をしなければならないのか、次世代のアプリケーションを、どのようなプラットフォーム上に、どのように構築していくかを提案していくことが次のステップにつながる」と新宅氏は話している。
たとえば、Oracle DatabaseやOracle Fusion Middleware、Oracle Applicationsの機能を紹介するだけではなく、どのように活用することで、変化に柔軟かつ迅速に対応できる仕組みを実現することができるかを紹介する。さらに、いかにSIパートナー企業やユーザー企業と協力していくことで、より一層効率的に次世代システムを構築できるかを模索していくということだ。
「OOWのテーマのひとつは経営とITの融合。経営面では事業再生のための最適なモデルを考え、その一方で技術面からITに対する期待を定義する。技術動向を伝えるだけでなく、ITの現在と未来、そして企業の期待とITの役割における接点が見出せればOOW 2006は成功といえる。単なるお祭りではなく、来場者に真の価値を提供するためのイベントを目指している」(新宅氏)
経営とITのつなぎは日本オラクルだけで実現できるものではなく、いかにパートナー企業やユーザー企業と協力することで実現するかが重要な鍵となる。新宅氏は、「日本オラクルは、経営とITの融合のための取り組み全体の交通整理をすることが役割。OOW 2006ではデータベース分野だけでなく、“エンタープライズソフトウェア分野”におけるオラクルの価値をより一層打ち出していく場にしたい」と話している。
- OOW 2006の開催に向けた意欲を語る日本オラクルの新宅社長。
「ユーザー企業やパートナー企業にオラクルのすべてが見えるということが、オラクルの次のステップにとって非常に重要になる。製品やサービスはもちろん、経営とITがいかにつながろうとしているかを理解することが、オラクルはもちろん、ユーザー企業やパートナ企業ーにとっても非常に重要になる」(新宅氏)
新宅氏はまた、次のステップにおけるもうひとつの重要な鍵として、「経営指標にスピードを取り入れることが重要」と話している。「今後の経営にとって、時間のロスが最も致命的になる。これまで不良資産の多くは無意味な投資だったが、これからは“時間”が不良資産になるだろう。“時間”をいかに有効利用した経営を実現するかが重要になる」と新宅氏は話している。
「余裕は必要だが、ムダな時間を無くしていくのは経営者の責任。迅速な意志決定ができる仕組み、意志決定を加速できる仕組みをITの活用で実現しなければならない。オラクル自身も“TURNAROUND”したいし、ユーザー企業やパートナー企業にも“TURNAROUND”してほしい。そのための価値をOOW 2006で一緒に作り上げていきたいと思っている」(新宅氏)