最終回を迎えるにあたって
早いもので、2008年6月2日に連載が始まった「エリック松永の英語道場」もめでたく50回を迎え、いよいよ有終の美を飾ることになりました。講演会などで「英語道場読んでいます!!」と声をかけていただいたり、個別に叱咤激励のメールをいただいたりと読者の皆さまに支えられてきた50回だなぁと感謝しています。最後を迎えるにあたり、この英語道場のメッセージは何だったのか再確認してみたいと思います。
英語道場では、難しい英文法や単語のことには一切触れていません。政治や音楽、映画など、身の回りの話題から英語が身近に感じるテーマを取り上げたり、ビジネスの場でヒントとなるシーンを取り上げることで、英語力以上に大切なものがあるということをまず理解してもらいたかったのです。私がよく言うグローバルビジネスのセンスは、英語という言葉の問題だけでは決してありません。極論になりますが、センスさえあれば言葉ができなくても通訳をつけるだけで世界で評価されるはずですし、実際そういう方が多くいらっしゃるのも事実です。
しかし、コミュニケーションを円滑にするには直接話せる方が効率的で、思いが伝わりやすいのも当然です。先日、ドバイで新規ビジネスにチャレンジしているアメリカ人の友人が突然、出張で成田にいるというのでホテルに飛んで行って話をしましたが、通訳が必要な場合はこのように素早く行動はできないでしょうし、ビジネスの知識がなければ英語が話せたとしても話題が続かないでしょう。実は、英語道場で伝えたかったことは、たった2点なのです。2点なら簡単ですよね。それは、
- グローバル感覚を養う
- 伝える手段を養う
です。
グローバル感覚とは何か
誤解してほしくないのですが、グローバル感覚とは外国カブレになることでは決してありません。英語道場で言うグローバル感覚とは、「世界を知り」「日本を知る」、そして「自分オリジナルの意見を持つ」ことです。
私たちは、どこかの国の国籍を持っていますが、あくまで個人はOnly Oneの存在です。そしてグローバル感覚は、個人ベースでの感覚を指します。集団に流されるのは、何も考えていないのと同義になってしまいます。つまり、特定の集団に属していることで先入観を持つのはルール違反なのです。難しいことは百も承知ですが、集団の呪縛がさまざまな誤解や争いごとを起こしているのは皆さんも感じていると思います。
Michael Jacksonの「Black or White」の歌詞を忘れないでください。
Protection for gangs, clubs, and nations
Causing grief in human relations
It's a turf war on a global scaleギャング、クラブ、国という集団を守るために
人間関係に悲劇が生まれている
これが地球規模の縄張り争いなんだ
伝える手段は地道なトレーニングから
2点目の伝える手段を養うためには、まず最低限の言葉の技術が必要です。そして、ニュアンスを伝えるため表現力(言葉だけでなく、ジェスチャーも含む)のバリエーションを持ち合わせていることです。
最低限の言葉の技術を身につけるのは地味な世界で、スポーツでいえば筋肉トレーニングに当ります。分厚い専門的な文法書を勉強する必要はありませんが、表現に必要な最低限の文法や単語は寝ていても口から自然に出てくるくらい徹底的に体に覚え込ませなければ使い物になりません。これは厳しいようですが、最低限必要な努力です。具体的に言うと、受験で使った文法書の例文を丸暗記することや、中学1年生レベルの単語の発音を完全にマスターすること、また受験によく出る単語集はページを丸ごと絵のように暗記するといったレベルを目指しましょう。