多様化するストレージネットワーク(後編)--FC-SANからIP-SAN、そしてFCoEへ

辻 哲也(ブロケード コミュニケーションズ システムズ)

2009-03-17 08:00

前編はこちらです

ブロックアクセスの多様化

 ブロックアクセス、つまりSANにおける通信技術(プロトコル)では、現在はファイバチャネル(Fiber Channel:FC)が主流であるということは、前回紹介した通りである。FCによるSAN(FC-SAN)は、サーバとストレージの接続インターフェースとして「マシンルーム内」や「データセンター内」で使用されるのが一般的だが、第2回でも紹介したように、近年は「災害復旧」(Disaster Recovery:DR)対策環境を構築するユーザーが増えてきている

 この際には、「FC-SANをWAN回線で接続する」技術が必要となる。WDM(Wavelength Division Multiplexing:波長多重分割)装置や長距離対応のコネクタ(Small Form factor Pluggable:SFP)を使用すれば、FCプロトコル自身をWAN環境で使用することも可能だが、WANで使用されるプロトコルとして現在最も一般的なものはIPである。そこで、FCをIPに変換する「FCIP(Fibre Channel over IP)」や「iFCP(internet Fibre Channel Protocol)」といった技術が、現在多くのユーザーで使用されている。

 FCIPは、FCをTCP(あるいはベンダー独自のプロトコル)/IP上にカプセル化して、FC-SAN同士をIPネットワークを“つなぐ”技術である(図6)。FCIPゲートウェイ製品はFCスイッチベンダーなどから提供されており、現在WANゲートウェイ製品としては主流になっている。

図6 図6:FCIP(Fibre Channel over IP)

 一方のiFCPは、FCとTCP/IPネットワーク間のゲートウェイ機能を提供する技術で、FCIPと違い「マルチポイント接続を提供」する仕組みや「各サイトのFC-SANを分離」する仕組みをプロトコルの中で実装している。一部ベンダーが製品を提供していたこともあって使用していたユーザーも多く存在したが、現在はFCIP製品でも前述の仕組みを提供する機能が実装されており、iFCPを実装した製品は現在ではほとんど提供されていない。

コストメリットで注目されるIP-SAN

 SANでは、FC以外のプロトコルも使用され始めている。その代表的なものが「iSCSI(internet SCSI)」である。iSCSIはSCSIプロトコルをTCP/IP上で動作させるプロトコルである(図7)。FCを使用したFC-SANに対して、iSCSIを使用したSANを「IP-SAN」などと呼ぶこともある。iSCSIプロトコルのメリットは、以下の通りである。

  • 通常のL2/L3スイッチやNICなどのTCP/IP、Ethernet機器を使用でき、FC-SANに比べて導入コストを抑えられる
  • 最も普及している、TCP/IPプロトコルの技術ノウハウを流用できる
  • 多くのOSが標準でサポートしており、別途専用のハードウェアを導入しなくても使用できる
図7 図7:iSCSI(internet SCSI)
※画像をクリックすると拡大して表示されます

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

関連記事

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    セキュリティ担当者に贈る、従業員のリテラシーが測れる「情報セキュリティ理解度チェックテスト」

  2. セキュリティ

    サイバー攻撃の“大規模感染”、調査でみえた2024年の脅威動向と課題解決策

  3. セキュリティ

    従業員のセキュリティ教育の成功に役立つ「従業員教育ToDoリスト」10ステップ

  4. セキュリティ

    IoTデバイスや重要インフラを標的としたサイバー攻撃が増加、2023年下半期グローバル脅威レポート

  5. セキュリティ

    急増する工場システムへのサイバー攻撃、現場の課題を解消し実効性あるOTセキュリティを実現するには

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]