この連載では、SAN(Storage Area Network)やNAS(Network Attached Storage)などのいわゆる「ストレージネットワーク」を中心に、データセンターを構成するサーバやストレージ、さらにはネットワークの最新の市場動向や関連技術を5回にわたって解説する。第2回となる今回は「ストレージネットワークの用途」をテーマに、ストレージネットワークが「現在どのように使われているのか」、「今後どのように使われていくのか」について解説する。
“統合”と“分散”のためのインフラ
前回はストレージネットワークの誕生について紹介したが、そこでサーバとストレージの関係性の変化を解説した。前回も触れたように、サーバとストレージに間に“ネットワーク”が存在することによって、サーバとストレージの関係は「1:1」もしくは「1:n」から「m:n」になる。このことはストレージネットワークがITシステム、特にサーバやストレージを“統合”あるいは“分散”する際のインフラとしての役割を担うことができる、ということを意味している。
まず“統合”からみていこう。“統合”ではストレージネットワークを用いることで、(1)サーバ統合(2)ストレージ統合(3)バックアップ統合――の3つを実現することができる。
サーバ統合(図1)
ストレージネットワークによって、1つのサーバは単一もしくは複数のストレージに自由にアクセスできるようになる。たとえばクラスタリングシステムにおいて、これまで1つのクラスタごとにストレージを構成していたものを、複数クラスタをSAN経由の共有ストレージにアクセスさせることで、「1:1」から「m:n」クラスタに移行することができる。このことにより、待機サーバ(つまり稼動していないサーバ)の台数を減少することができ、これまで待機サーバにも支払っていた運用保守コストを削減することができる。
市場の方向性としては、(後編で説明する)仮想化技術の進展もあってサーバ台数の削減、つまりサーバ統合が進んでいくと思われる。しかし、用途によっては「統合できない」サーバも引き続き存在するだろう。統合するかしないかはシステム管理者の判断に委ねられることになるが、ここで強調しておきたいのは、ストレージネットワークによって、サーバ統合における選択肢が提供されるということである。
ストレージ統合(図2)
ストレージネットワークによって、1つのストレージに複数のサーバからアクセスできるようになる。ストレージネットワークが登場する以前はシステムごと、場合によってはサーバ単位にストレージが必要だったため、それぞれのストレージ使用率は非常に低いものであった。ストレージネットワークを介してストレージ共有が実現されることで、ストレージ“インフラ全体としての利用率”を大きく向上することができる。この場合、必ずしもシステムやサーバごとにストレージを用意する必要はないため、ストレージを統合することが可能となる。
サーバ統合と同様ストレージについても、NASもしくはファイバチャネル(Fibre Channel:FC)インターフェースを持った「ネットワークストレージ」が普及し、市場全体としてはストレージ統合が加速していると考えられる。ただ近年は「用途に応じてストレージを使いわける」という「ティアード(階層型)ストレージ」といった概念でストレージを効率的に利用するユーザー企業も増えてきており、ストレージ統合の形態にも変化がみてとれる。