日中韓の共同開発Linuxで米企業のサポート対象に--ミラクル・リナックス

田中好伸(編集部)

2007-11-12 08:00

 さまざまな原因があって、その原因が絡み合うなかで、プロジェクトが“デスマーチ”とならざるを得ないのは、往々にして社内での“コミュニケーション不足”という事態が発生してしまうからだ。しかし、これが複数企業間で、しかも国籍や文化が異なる国と国の企業間で進行するプロジェクトだとしたら、コミュニケーション不足はどうやって解消していけばいいのだろうか――。

 この7月にミラクル・リナックスでは、それまで「MIRACLE LINUX」というブランドで販売していたLinuxディストリビューションを「Asianux」に名称を変更して9月から販売することを発表した。このAsianuxとは、日本のミラクル、中国のRed Flag Software、韓国のHaansoftが共同で開発するLinuxディストリビューションであり、そのプロジェクト名でもある。

 ミラクルで取締役最高技術責任者(CTO)を務める吉岡弘隆氏は、自ら開発に携わるAsianuxについて「奇跡に近い」と語る。2003年12月から開発が始まったAsianuxは、半年後の2004年6月に正式メジャーバージョン「Asianux 1.0」、2005年8月に「Asianux 2.0」、そして2007年9月に「Asianux 3.0」と順調にメジャーバージョンアップを重ね、プロジェクトは続いている。

スケーラビリティがなかったLinux

 吉岡氏はもともと、日本オラクルに在籍、1995〜1998年の3年間は、米Oracleで「Oracle 8i」の開発を行っていた経験もある。その後1999年頃に、日本オラクルで「エンタープライズ向けのLinuxディストリビューションを開発する」という話が持ち上がり、そこから、ミラクルが創設されることになり、その立ち上げメンバーに吉岡氏も加わることになったのである。

 その頃のLinuxといえば、カーネルが2.2であり、処理方式として現在では当たり前となっている「対称型マルチプロセッシング(Symmetric Multi Processing:SMP)」をサポートするかどうかといった議論がなされているところで、「スケーラビリティはなかった」(吉岡氏)という代物だ。それでも「そこそこ安定していたから、ウェブサーバや部門のファイルサーバとして利用されていた」(同氏)程度にすぎなかったのである。

 そうした時代状況の中で、ミラクルが開発しようとしていたエンタープライズ向けディストリビューションは、Oracleを導入しやすい、商用のエンタープライズ向けというものとして企画されたが、当然そういったディストリビューションは、世界のどこにも存在していなかった。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    従来型のセキュリティでは太刀打ちできない「生成AIによるサイバー攻撃」撃退法のススメ

  2. セキュリティ

    マンガでわかる脆弱性“診断”と脆弱性“管理”の違い--セキュリティ体制の強化に脆弱性管理ツールの活用

  3. セキュリティ

    クラウドセキュリティ管理導入による投資収益率(ROI)は264%--米フォレスター調査レポート

  4. クラウドコンピューティング

    生成 AI リスクにも対応、調査から考察する Web ブラウザを主体としたゼロトラストセキュリティ

  5. セキュリティ

    情報セキュリティに対する懸念を解消、「ISMS認証」取得の検討から審査当日までのTo Doリスト

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]