ガートナー、ASP市場の動向を語る:ソフトウェアのオンデマンド化を推進するASP(3)

藤本京子(編集部) 2006年04月13日 23時27分

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 ASP特集の1回目と2回目は、Salesforce.comとNetSuiteの2社にフォーカスし、各社の戦略を探った。最終回となる今回は、このASP業界をアナリストがどう分析するかをレポートしたい。

ASPの浸透度と市場予測

PHOTO ガートナー リサーチ ソフトウェアグループ バイスプレジデント兼チームマネージャー 丹羽正邦氏

 一般的にASPを導入することによるユーザーにとってのメリットは、初期投資が少ないことや、最新のサービスを迅速に導入できること、アップグレードが容易であることなどが挙げられる。ガートナー リサーチ ソフトウェアグループ バイスプレジデント兼チームマネージャーの丹羽正邦氏も、「ソフトウェアをパッケージで購入すると、数年で陳腐化するが、現場で手を加えることなしに常に最新の機能が使えるのはASPならではだ。同じサービスを利用していれば、他社との連携も容易となる。それに中小企業にとっては、やはり初期投資が少ないことが大きな魅力だ」として、特に中小企業での市場性の高さを指摘している。

 ASPは、Salesforce.comが成長していることもあり、CRM関連の成功が際だっているが、NetSuiteがERPやEコマースツールを提供しているほか、プロジェクト管理製品やテストツールなど開発関係のASPサービスも存在する。ほかにも米国では、従業員の出張用に航空券やホテルの手配などをASPで実現するReaden Commerceや、内部統制やリスク管理のプラットフォームをウェブ上で提供するAxentisといった企業も存在する。

 CRM関連のASPが成功している理由のひとつとして、丹羽氏は「タイミング」を挙げている。「1990年代後半に2000年問題対策としてERPを導入した企業が、次にCRMに注目しはじめた。時期を同じくしてASPが登場しはじめたため、CRMを導入する際にASPを検討するケースが多くなった」と丹羽氏は指摘する。

 ガートナーでは、ITサービスの成熟度を示すハイプサイクルを発表しているが、同社が発表した資料によると、2005年6月時点のASPの位置づけは、幻滅期を過ぎ、啓蒙活動期に入っている。これは、日本においても米国においても大きな違いはない。(「図:2005年のASPのハイプサイクル」参照)。

PHOTO 図:2005年のASPのハイプサイクル

 市場規模も順調に成長することが予測されている。ガートナー リサーチ ソフトウェアグループ リサーチディレクターの河本吉夫氏は、「国内におけるASPの市場規模は、2006年で820億円強になり、2007年は1000億円を超え、2008年には1400億円近くにまで成長するだろう」と見ている。

既存のパッケージベンダーに勝算は

 ASPの主な業界プレーヤーとしてガートナーでは、Salesforce.comやNetSuiteといったASP専業ベンダーに加え、Microsoft、IBM、Oracleなどの名前も挙げているが、既存のソフトウェアパッケージベンダーが同分野に参入することについて「パッケージベンダーの収益モデルはライセンスを販売することで、サービスを売るというASP専業ベンダーとは異なるため、新たなモデルをどこまで理解できるかが鍵となるだろう」と丹羽氏。同氏は、「まずASPで機能を使ってもらい、あわよくばソフトウェアの販売に結びつけたいという考えが全面に出てしまうと厳しいのではないか」と指摘する。ソフトウェアパッケージの販売は通常、販売に結びつけば目的が達成されたことになるが、ASPの場合は継続してサービスを提供し続けなくてはならない。こうしたモデルに我慢できるかどうかが、ASP市場に参入する既存のパッケージベンダーに問われてくる。

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