後れるBCPの取り組み
アクセンチュアの今回の調査は、システムの基盤(インフラストラクチャ)の側面からも企業の取り組みを見ている。現在、インフラストラクチャの観点からは、災害復旧(Disaster Recovery:DR)対策を含めた業務継続計画(Business Continuity Plan:BCP)が議論されるようになっているが、この点でも日本企業はやはり後れを取っている。
「日本企業の多くはシステムはDR対策にとどまっており、業務部門を含めた総合的なBCP策定や定期的試験で立ち後れている」(沼畑氏)
調査では、DR対策を含めたBCPについて、企業が取り組むべきBCPに理想像と実際の現状を比較。調査結果によれば、欧州と米国が現状を理想像に近づいているのに対して、日本企業は、欧州・米国ほど現状を近づけていないのが実情だ。
具体的には、日本企業の場合システムのバックアップ、リカバリプロセスを策定しているものの、総合的、定期的なBCPに対するテストを実施するまでには至っていないという傾向を示している。企業としてBCPを実体あるものにするには、BCPを策定するだけではなく、実際にテストをすることで、つまり人間が策定したBCP通りに動くことで、BCP策定時には気付かなかった細かい部分を修正していく必要がある。いわば、BCPは現場での“カイゼン”作業を必要としているのである。こうした点で日本企業のBCPへの取り組みは立ち後れていると分析できるだろう。
仮想化技術はビジネスメリットを見いだしにくいのか
インフラストラクチャという観点では、インフラ統合への取り組みでも調査が行われている。調査では、現状におけるサーバやストレージとデータセンターという点に着目して、BCPへの取り組みと同様に、現状と理想像のギャップを比較している。
具体的には、「異なるオペレーティングシステム(OS)とプラットフォームによる分散された環境」から「プラットフォームとインフラサービスのプロビジョニングにより仮想化された環境の中央管理」へ進化できているか、ということを調べている。“プロビジョニングによる仮想化された環境の中央管理”とは、仮想化技術によってコンピュータ資源をプール化して動的に割り当てることができる環境にある状態を指している。
この点で、日本企業は「異なるOSとプラットフォームによる分散された環境が一般的」(沼畑氏)という状況だ。インフラ統合という取り組みでは、仮想化技術をいかに活用していくかが問われることになる。だが、仮想化技術に対して直接のビジネスメリットを見いだしにくいとする姿勢の日本企業の場合、米国や欧州に比べて、後れを取らざるを得ないのは当然と言えるだろう。
強まるコスト削減圧力
ここまで見てきたアクセンチュアの調査は、260以上のグローバル企業や公的機関に所属するITエグゼクティブ層に対してオンラインでの自己査定で実施されている。対象地域は、米国、欧州、そして日本を含むアジア太平洋地域だ。調査は2007年1月から展開されているが、日本と中国での長期的調査は2008年に実施されている。つまり、今回の調査は、2008年9月の米大手投資銀行Lehman Brothersの経営破綻を契機とする金融危機、それによって加速された世界規模での景気後退の状況を織り込んでいない。