SOAのアンチテーゼ
前回、SOAの本質的な意味を経営的視点でどう考えれば良いのかをお伝えしました。おさらいしますと、SOAの意義は、IT資源の効率化、すなわちITコスト削減と、次への施策(戦略)実現へITが追従するスピードの向上に集約されます。しかし、企業によって異なる業務プロセスをITのモジュールにし再利用出来る形に設計・開発する為には膨大なコストと手間がかかってしまいます。再利用など何も考えないで開発した方が、楽ですしコストがかからないだろうというのはSEでなくとも簡単に想像できることでしょう。SOAは実は手間とコストがかかるのです。さらに再利用出来るとされた機能が、他のシステムで将来的に再利用できる保証は何もありません。次のシステムを開発するときに意地でもSOAの機能を使いこんでやるという位の意気込みがないと、またゼロベースでの開発が始まってしまいます。これがSOAの現実です。
もうひとつの現実として、現在、SOA市場を牽引しているのはパッケージベンダーであるというのがあります。パッケージベンダーはノウハウを機能としてパッケージ化しているから安い。もちろん、パッケージベンダーが提供しているSOA機能は、あなたの会社の業務を分析して作られたものではありません。今後あなたの会社がパッケージベンダーに合わせてITを設計していくという戦略であれば問題はありません。それも選択肢の一つだと思います。パッケージベンダーの先端事例に合わせてビジネスモデルを構築するということですね。でも考えてみてください。考えてもみなかったビジネスが登場するこの時代に、そのパッケージベンダーの考えるSOAを信じてよいのかを。次のビジネスを考えるのは皆さんではないのでしょうか?SOAの本質的な考え方を思い起こせば、パッケージベンダーが牽引するSOAは、本来のSOAの考え方に対するアンチテーゼなのです。
経営者がITと向き合う瞬間
では、経営者は変化の激しい波の中で、どうITと向き合えばいいのでしょうか?
経営者は、抜本的な改革を常に考えなければいけない。しかし抜本的な改革はIT抜きに実現できない。そのITにはお金と時間がかかるのが事実。経営者が戦略を実現させる為になにが必要なのかを経営者自身がしっかりと押さえることが重要、突き詰めれば戦略を考える為に充分な情報がきちんと手元にあるかは更に重要です。戦略自体が駄目であればいかに優秀なITでその戦略を実現してもパフォーマンスは出せないでしょう。
これを読まれている経営者の中には、「うちの会社は、ちゃんとコンサルタントも雇って戦略作りのアドバイスをもらっているから大丈夫だ」という方もいらっしゃるでしょう。経営コンサルタントの立場としては、お仕事がいただけて嬉しい限りですが、顧客トレンドの変化が激しい今の時代では、それだけでは十分とは言えません。日本だけでも地域ごとの特性があるように、グローバル経営が必須になってきている現在では情報は取れて当たり前の時代ではなくなっています。もちろん、例えば各現地法人の情報は時間をかければ取る事ができるでしょう。しかし、コスト競争に勝ち抜くにはリアルタイムで現地の情報をチェックし、常に判断、アクションを取れることが経営者に求められてきています。コスト競争に勝ち抜く為に、ノンビリと在庫覚悟の見込み生産をしている企業が生き残れるでしょうか?