三国大洋のスクラップブック

続・税金を払わないIT企業 - (page 2)

三国大洋

2012-12-13 08:00


 米国時間12月10日に公開されたBloombergの記事には、グーグルが2011年度、法人税のかからないバミューダ諸島に登記したペーパーカンパニーに付け替えた利益の額は98億ドルに上り、2008年度の54億ドルから81%も増加。また様々な節税策を通じて実効税率を3.2%に抑えたことで、グーグルは納税額を約半分まで引き下げることに成功し、節約した金額は20億ドルにも上った(実際の納税額はあわせて15億ドル)——などという記述がある。

 手法は以前と変わりなく、今回の記事にも「ダブル・アイリッシュ」「ダッチ・サンドウィッチ」といった言葉が出てくる。

 一方、この記事からは、深刻な財政難に直面している欧州各国などの当局が、グーグルや、同様の手法を使って超アグレッシブな節税対策を講じている企業に対して、本腰を入れて対策に乗り出してきていることもうかがえる。

 たとえば英国では、11月に議会でこの問題に関する公聴会が開かれ、グーグルやアマゾン、スターバックスなどの幹部が呼びつけられ、証言を求められた。ちなみに英国市場で年間41億ドルの売上(全体の約11%)を稼いだグーグルの納税額は、わずか600万ポンド(960万ドル)に過ぎなかったという。

 11月12日の聴聞会については、英議会の「Public Accounts Committee」という委員会の委員長が、各社の節税行為について「道義に反する行為」と呼んだという報道もあった

 フランスも似たような状況だ。元政府高官が「グーグル、アップル、アマゾン、フェイスブックは、4社あわせて年間5億〜6億ユーロくらいフランスで納税するべきなのに、実際に払われた納税額はその100分の1にも満たない」などと議会で証言しているという。具体的な金額については、4社のオンラインでの売上合計が22億〜25億ドル、実際の納税額はあわせて約400万ユーロ、とある。また、グーグルがアイルランドに欧州拠点の本社を置いている理由について、法人税が12.5%と、33%のフランスなどに比べて格段に低いため、と説明している。節税手法が「ダブル・アイリッシュ」と呼ばれるの理由の一つだ。

 フランスの税務当局は、2011年6月にグーグルのパリ・オフィスを調査したが、今年に入ってからはグーグルに対してだけで約13億ドルの所得税を増額する旨の提案を行っているという。

 このほか、イタリアの税務当局は11月にグーグルをターゲットにした監査を開始。すでにミラノオフィスの調査を実施したほか、さらにフェイスブックに対しても同様の調査を進めているという。オーストラリアでは11月に財務副大臣がグーグルの節税策について言及したともある。

 また、このほかに11月下旬のBloombergの記事では、同月上旬にメキシコで開かれたG20で、「多国籍企業の行き過ぎた節税(税金逃れ)を封じ込めるには各国の協調が必要」として、英独の代表から税制に関する新たなルールの導入を呼びかける提案があったこと、この呼びかけを踏まえてOECDでも対策の検討に入っていることが伝えられている。OECDではこの件に関する改革案の草稿を来年1月に加盟34カ国に配布、それを踏まえて2月にモスクワで開催予定のG20で、この案についての議論を開始したい考えだという。

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