このこと自体は、委託会社間の競争を促進し、創意工夫を促すためにも悪いことではない。しかし、情報を共有するという観点からは、本来共有すべき情報が十分に伝わらないという、課題の本質が明らかになった。
しかも、そのコールセンターに蓄積された情報は、店舗の販売員には全く共有されていないか、最前線に共有されるころには賞味期限切れの情報になっていた。
また、ソーシャルリスニング(インターネット上の口コミ)分析や自社のホームページへFAQなどの分析を別の部署が担当しており、コールセンターの入電分析の結果を組み合せて分析し、東京と大阪のコールセンターへ共有されることはなかった。図のようにそれぞれの分析とフィードバックのループが分断されている状況だったのだ。
断絶される3つの情報ループ
入電のタイミング
プロジェクトでは、ソーシャルリスニングの結果と入電が増えるタイミングの相関についても分析してみた。面白いことにソーシャル上での“つぶやき”がピークを迎えてから7日後に入電量が一気に増えることがわかった。
製品の故障や不具合の初期段階の情報は、コールセンターでも十分に共有されていなかった。利用者(問い合わせた顧客)はオペレータ間をたらい回しにされた挙句、近くの店頭へ製品を持参するように誘導される。しかし、店頭側もこの入電情報を含めて、情報を共有する仕組みがないため、十分な対応ができない。
同社では重クレーム化するものや、緊急度の高い情報については、「緊急」や「重要」という判子がつかれた回覧が本部から各店舗へFAXで一斉配信をしてきた。しかし、そのとき販売員はまさに前線で接客の真っ只中であるか、すでにクレームの渦に巻き込まれている。手遅れである。
利用者からすると、コールセンターに電話しても要領を得ず、店頭に持ち込むも、また最初から説明をしなければならず、「故障ではない」と言われる。嫌が応にも重クレームと化すことは間違いない。これをモンスターカスタマーというのであれば、それは筋違いである。
この状態をモバイルの力でどのように改善したのか。後編で解説する。
- 千葉 友範
- デロイト トーマツ コンサルティング マネージャー 大学院在籍中にIT系ベンチャー設立に参画を経て現在に至る。業務改革プロジェクトを中心に実施し、近年では、デジタルデバイスを活用したワークスタイルチェンジや販売力強化など、戦略策定から実行支援までプロジェクトを多数実施。「会社で使う タブレット・スマートフォン2013」など執筆多数。
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