イノベーションを生む組織へ
問題はそうした情報をどのように取得するかだ。
筆者は日常業務の活動情報や個人の志向性などの情報のことをしばしば、「ワークログ」と表現しているが、このワークログを取得するツールこそがエンタープライズモバイルである。また、センサ情報などを加えビッグデータとして分析することで、持続的なイノベーションの可能性を見出す組織を目指すこともできる。
エンタープライズモバイルは近年、キャリア、職能、スキルなどいった定性的な情報と組み合わせ、人事や組織変革への活用、リテンション戦略やタレントマネジメント戦略への活用など人事面へも新たにその貢献の幅を広げることが可能な環境を整えつつある。
こうした新たな潮流をデロイトトーマツでは「デジタル人事」と称して、組織変革や行動変革を支援しているところだ。
まとめ
ここまで、社内教育でのスマートデバイスの活用について解説してきた。筆者自身、この教育に関する分野については多くの教育関係者や今後の教育のあり方について一家言あるビジネスパーソンたちと議論を重ねてきた。教育の分野では、まだ電子書籍のような閲覧ツールとしてのスマートデバイスを利用するという理解が根強いのも事実だ。しかし先駆的な先生方や企業では、紙の代替物という理解から、コミュニケーションツールとしてうまく活用するケースが増えている。
さらに、企業の中にはエンタープライズモバイルの活用の1つとして、すでに記述したようにM2Mやビッグデータ分析を活用しながら次世代の人材育成やイノベーションを起こす組織作りのインプットをしていこうという動きも始まりつつある。
こうした取り組みはまだ始まったばかりだが、今後、ウェアラブルデバイスなどの技術がさらに高度化された際にはこうした考え方はもっと現実的なサービスになると考えられる。
- 千葉 友範
- デロイト トーマツ コンサルティング マネージャー 大学院在籍中にIT系ベンチャー設立に参画を経て現在に至る。業務改革プロジェクトを中心に実施し、近年では、デジタルデバイスを活用したワークスタイルチェンジや販売力強化など、戦略策定から実行支援までプロジェクトを多数実施。「会社で使う タブレット・スマートフォン2013」など執筆多数。