「俺の言うことがわからん奴はバカ」という人が欲しい--総務省のイノベーション創出事業“変な人”

山田竜司 (編集部) 2014年06月05日 07時30分

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 「なぜ“変な人”という表現ではダメなんだ。“独創的な人”より伝わりやすいじゃないか。これだからイノベーションが起きないんだよ」―こう指摘したのは元総務副大臣の柴山昌彦氏という。

 総務省は5月22日から、イノベーションを起こせる人材を発掘するための施策「独創的な人向け特別枠(仮称)」(通称:変な人)の業務実施機関の公募を開始した。

 5月22日に発表した今回の事業は“変な人を集めて育てる”というものであり、現在は“変な人を集めて育てる”ための事務局を企業や団体から募集しているという段階だ。今回の事業で集めたい“変な人”は6月末から7月初旬から募集する予定だ。現時点でどんな人材を集めるのか、その方法や採用基準など具体的なことは未定となっている。

 今回の事業は、イノベーションを起こすためのプロジェクトを政府が推進するという意味合いもある。プロジェクトの狙いや経緯を総務省 情報通信国際戦略局 技術政策課 統括補佐の高村信氏が説明してくれた。

イノベーションに適した国を作る

 「世界で最もイノベーションに適した国を作る」という安倍晋三首相の号令のもと、総務省は2013年1月18日から情報通信審議会の中でイノベーション創出委員会を立ち上げた。2013年7月の中間答申では国の新たな取り組みの必要性が指摘され、公募型の研究開発「若手ICT研究者等育成プログラム」の一環として「独創的な人向け特別枠(仮称)」を設定した。


「独創的な人向け特別枠(仮称)」 “ICT分野において破壊的な地球規模の価値創造を生み出すために、大いなる可能性がある奇想天外でアンビシャスな技術課題に挑戦する人を支援する”という

 予算約21億円のうち、約8000万円を使う。応募資格を義務教育修了者と広く設定している。この6月末~7月に募集を開始し、総務省が採択した人物や案件10件に対し、研究費として最高で年間300万円を支給する予定だ。採択者にはクラウドなどを含めた開発環境などを用意し、学会でのイベントなどを予定している。既存のビジネスモデルを破壊しうるほどの価値を創造するような、いわゆる“破壊的イノベーション”を起こすため人材を輩出することが目的だ。

 公募に当たり、冒頭の通り最初は“変な人”を集めるという表現を使ったが、会議の構成員から“変な人”では別の意味も含まれるため、“変わったことを考える人”に変更され“独創的な人向け特別枠”に落ち着いたという。冒頭の柴山氏の言葉は、そうした会議の場でのものだった。

求められる脱常識:イノベーションのジレンマ

 なぜ、従来の常識とは異なる感覚を持つ人が必要なのか。イノベーション創出委員会の出発点は“イノベーションを起こすための取り組み”の目標と施策を定めることだった。メンバーには総務省の情報通信国際戦略局に加え、富士通、NEC、ソニー、パナソニック、東芝など各家電メーカーや、大手IT企業の責任者が集まった。

 イノベーションを起こすための議論を進めるうち「そもそも新しいことに挑戦する人が減った」という意見が出た。口を開いたのは家電メーカー幹部だ。「たとえばTwitterのようなサービスは以前より社内で企画があった。しかし事業化には踏み込めなかった」――。この発言に各家電メーカー幹部などが賛同、尖った企画にゴーサインを出すことができない理由が異口同音に語られたという。

 その理由とは「ブランドを毀損できないため」だ。IT分野では許される程度の不具合も、電機メーカーでは許されないことがあるという。また、トラブルやサービスを悪用して犯罪が起きたと批判されるリスクもある。

 不具合や社会性に対し、電機メーカーへの風当たりはIT系企業よりも強く、「20年前のストーブを使って一酸化中毒者が発生した場合、回収を求められる」。いわゆる破壊的イノベーションを起こす際、既存ブランドを守ることは難しい。まさに経済学者のClayton Christensen氏が提唱する、大企業がベンチャー企業の前に力を失う理由を説明した理論「イノベーションのジレンマ」そのものだ。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んだ方に

関連ホワイトペーパー

連載

CIO
ITアナリストが知る日本企業の「ITの盲点」
シェアリングエコノミーの衝撃
デジタル“失敗学”
コンサルティング現場のカラクリ
Rethink Internet:インターネット再考
インシデントをもたらすヒューマンエラー
トランザクションの今昔物語
エリック松永のデジタルIQ道場
研究現場から見たAI
Fintechの正体
米ZDNet編集長Larryの独り言
大木豊成「仕事で使うアップルのトリセツ」
山本雅史「ハードから読み解くITトレンド放談」
田中克己「展望2020年のIT企業」
松岡功「一言もの申す」
松岡功「今週の明言」
内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」
林 雅之「デジタル未来からの手紙」
谷川耕一「エンプラITならこれは知っとけ」
大河原克行「エンプラ徒然」
内製化とユーザー体験の関係
「プロジェクトマネジメント」の解き方
ITは「ひみつ道具」の夢を見る
セキュリティ
エンドポイントセキュリティの4つの「基礎」
企業セキュリティの歩き方
サイバーセキュリティ未来考
ネットワークセキュリティの要諦
セキュリティの論点
スペシャル
エンタープライズAIの隆盛
インシュアテックで変わる保険業界
顧客は勝手に育たない--MAツール導入の心得
「ひとり情シス」の本当のところ
ざっくり解決!SNS担当者お悩み相談室
生産性向上に効くビジネスITツール最前線
ざっくりわかるSNSマーケティング入門
課題解決のためのUI/UX
誰もが開発者になる時代 ~業務システム開発の現場を行く~
「Windows 10」法人導入の手引き
ソフトウェア開発パラダイムの進化
エンタープライズトレンド
10の事情
座談会@ZDNet
Dr.津田のクラウドトップガン対談
Gartner Symposium
IBM World of Watson
de:code
Sapphire Now
VMworld
Microsoft WPC
Microsoft Connect()
HPE Discover
Oracle OpenWorld
Dell Technologies World
AWS re:Invent
AWS Summit
PTC LiveWorx
吉田行男「より賢く活用するためのOSS最新動向」
古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」
中国ビジネス四方山話
ベトナムでビジネス
日本株展望
企業決算
このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]