評価の軸を明示
出てきた成果をどのように評価するのか。現在、「実現性(成功)への道筋への輪郭が明確になったかどうか」を評価とする。失敗により道筋がたてられた場合は「高評価」であり失敗例の共有をプログラムを実施する予定だ。例えばアウトプットが理論の場合、仮説の精度を上げることができればその点が評価される。
アウトプットがサービスの場合、やってみなくてはわからない部分も多いため“失敗”は許される。しかし、なぜ失敗したのか、そのプロセスを検証、共有することが条件となる。
「事業化の観点から成功した人のまねをしても成功するとは限らないが、失敗した人のまねをすると必ず失敗する。失敗体験を集めて共有することに意味がある。研究者の中にも失敗の経過を論文に加えたほうがよいといわれるくらいだ。何をすると失敗するかも知的財産になり得る」(高村氏)
研究費が1人あたり年間300万円では足りないのではないか。「取り組みが大規模になりそうな段階で別の予算の利用も視野に入れる。サーバ代が跳ね上がるような事態の時に手を挙げなくなるのだとしたら、この国のベンチャーキャピタルに未来はない。あくまでゼロを1にする施策です」と語った。
今回のこの施策の反応についてはクレームも多いという。「電話で数十件クレームがあり、直接対応している。ほめていただける人からの連絡はこないが、1時間程度話を聞いてから趣旨を説明すると応援してくれるようになるケースが多い」と反響の手応えを感じている。
人材の育成方法
一方、「変な人」を公募するものの、その育成方法はいまのところ決まっていない。どんな人でも、人が困った時は何でも相談できる、スーパーバイザーを育成にあてる方式を検討しているという。
スーパーバイザーの人物像は「独創的な人でも納得して話がしたくなるような、魅力的な人。技術者や人物間のコーディネートがうまい人、面白いことに感度が高く才能を見抜ける人」としている。「指導教官とは違い、スーパーバイザーは相談役に徹し、型にはめることはしたくないため」だ。
情報処理推進機構(IPA)の「未踏IT人材発掘・育成事業」に似ているようだが、プログラマーを育てるわけではない。アウトプットはソフトウェアである必要はなく、指導する人物はつけない。応募者は義務教育を終了していれば高校生から85歳の人物もOKなど資格の点も異なる。
今回のプロジェクトは、風変わりな人を拾い上げモノにできるか、それで社会が変わるかどうか。いわば1つの社会実験だという。高村氏は、ファイル交換ソフト「Winny」を開発した金子勇氏の名前を出した。金子氏は、Winnyの違法的な部分で有名になってしまった。Winnyが著作権侵害だけの形でフォーカスされなければコンテンツ流通も変わったかもしれず、金子氏のような才能を拾い上げたいという。
「この取り組みを10年続け、1000人集めてヒットを何本か出したい。日本企業の創業5年生存率は5%。10年もたつと1%を切るが、その数字が1つの指標となる。いままではつぶされた人を支援する、突き抜けたものにする。そもそもIT業界を発展させたのは『スーツなんて着やがって』という、その時代の常識がきらいな、ある意味変な人たちだと認識している」(高村氏)
事業構造