国や地方自治体などが公共データを公開して、官民協働を目指す「オープンデータ」の試みが進んでいる。11月21日、経済産業省と総務省が主催する「オープンデータ・アイデアソンin東京」が開催された。さまざまな社会課題に対して企業、市民、行政関係者などの人々が集まり、データを活用した解決アイデアを出すという試みだ。
経産省と総務省による開催挨拶から会は始まった。「単に行政がデータを公開することだけではなく、実際にデータを用いて何ができるかが重要であり、良いアイデアによってさまざまな行政部門を説得することで、データの公開にもつながる。また、新事業やビジネスにつながるような、真に求められているデータをどう出していくかが課題だ」と両社は説明した。
次に、いくつかのテーマについて、5分という短時間で講演をする「ライトニングトーク」が実施された。著作権フリーの地理情報データを作成している「オープンストリートマップファウンデーションジャパン」の東氏は、車椅子を例に出して、地域のユニバーサルデザインやバリアフリーに関する情報を公開、共有することについて説明した。その取組みの1つとして「WheelMap」という、ある場所が車椅子で通れるかどうかを地図にマッピングするサービスを紹介した。
車椅子で行ける場所かどうかを地図上にマッピングして共有できる「WheepMap」
地理空間情報を専門とする国際航業の政木英一氏は、必要なときに必要な情報を出せるようになると、日常時にも災害時にも役に立つサービスを提供できるとし、まずデータありきではなく、人々のニーズで推進していくことが良いのではないかと主張した。
横浜市の関口昌幸氏は、市内でのオープンデータに関する先進的な取り組みについて説明した。横浜市はオープンデータについて、政策課題を市民と解決していくこと、また他の企業などのさまざまなデータとのマッシュアップの2つをミッションとしている。従来の縦割りの組織の中で、「オープンデータ推進プロジェクト」を立ち上げ、データ公開を推進している。その中で、総務省の実証実験とし、自治体のオープンデータ基盤の構築、活用に取り組みを始めた。具体的な取り組みとして、「都市や経済の活性化」「人への投資」「安心、安全」を挙げ、旧東海道に関するハッカソンや、女性の立場でデータから政策課題を考えるワークショップを実施した。また、ゲーミフィケーションによる地域の防災の革新的な取り組みをアナウンスした。
泉交通安全協会の櫻井元美氏は、警察署から得た交通事故の情報をメールで配信する試みについて紹介した。身近な事故の情報を知ることで事故について注意でき、忘れがちな交通ルールについて注意を喚起するような目的で始めたという。データは紙で入手し、職員が入力することで、5年間の情報を得ているという。また、「事故対策をして下さい」という要望を、実際に事故が起きた地域に対して的確にすることができるなど、データをさまざまに活用しているという。