“変な人”を応援する事業
IT企業幹部からの口から出てきたのは「最近、社会常識に欠けるともとれるが、高い能力や独自の論理を持った“変な人”が減った」という話だ。そのような人はこれまでも企業や学術の世界で理解ある人物に評価され、時に大きな成果を上げていたという。
これまでスポイルされてきた、変わったことをする人材こそがイノベーションを起こしうるとし、そういった人を探してサポートすることを目標の1つに設定した。
高村氏が考える変な人の人物像は、ベンチャーキャピタルのことをバカにしているような人だ。「俺の言うことがわからん奴はバカだというような人が欲しい。そうした人に対して国でできることとは『この人は面白いかもしれないので注目してみませんか』というラベルをはること。われわれは変な人が困らないよう、ロジスティクスを整え、いわば“お世話係”を買ってでたい」(高村氏)
変な人の中には日常的な生活スキルを持たない人もいる。例えば会社の経費で処理するのに領収証をもらうことを忘れてしまうような人だ。「総務省では、代わりにモノを買ってくるなど経理的な作業や広報、特許など法律面サポート環境を用意する。“環境とお金さえあれば何とかなる”という人が芽を出すチャンスに手を貸したい」(高村氏)
“変な人”が出てこない理由
なぜ、このような、いわゆる破天荒な人が出てこなくなってしまったのだろうか。高村氏は、イノベーションを賛美する声はあれど、実際には組織の中で変な人がそのまま働いていくのが難しいと話す。「失敗を恐れる、減点主義の企業が実際は多い。出る杭は叩かれる。日本の法人の多くは合議制であり、部長が許可しても社長がだめなら進まない」など独創的な企画が出にくいとされる背景を説明した。
採択方法
人材採用やプランを採択する条件はまだ検討中であり、プロジェクトの事務局が決まった時点で事務局と相談するという。選別の際、何らかの提案書やレポートを課す予定だ。重要なのは例えば論文を提出する場合、仮説の適用範囲つまり“どのしきい値までその仮説が有効か”示すことができるかどうかだ。
「(その仮説が)いわばサイエンスかどうかを見たい。たとえば相対性理論が間違っているというのであれば、それを証明する必要がある。どういう条件なら自分の仮説が間違っているか、否定できるかどうか。そのため、仮説のしきい値があるかどうかを見る」(高村氏)。変な人とは言っても「ロジックを伴った」アウトプットが出せる点は大前提ということだ。