従って、上記の3大クラウドベンダー(AWS、Google、Microsoft)に対しては、ニッチな市場、もしくは特定の垂直市場(産業)に特化したクラウドサービス、それも元の事業と何らかシナジー効果をもたらすものを打ち出すことが唯一の対抗策になる、と考えます。特に、IaaS事業を推進する事業者にとっては、上記3社と真っ向から対抗するため、なおさらです。
3社の台頭を通して、クラウドサービスのコスト競争がさらに厳しくなってきていますが、これによって市場全体が大きな影響を受けることは自明です。IaaSを提供するパブリッククラウドベンダーはもちろん、直接の影響を受けます。Rackspaceが株価低迷など、事業的に大きな転換の時期を迎えているのも、この価格競争に戦略的なビジョンをもって対策できていないことが原因という指摘が多く見受けられます。
しかし、最も影響を受けてしまうのは、プライベートクラウドを事業としているシステムインテグレーター(SIer)になると予測しています。パブリッククラウドの維持費用が安くなれば、プライベートクラウドにわざわざコストをかけて開発、運用する経済的な価値が失われていくからです。今後SIerとしては、プライベートクラウドの提案をするにあたり、顧客が納得できる投資対効果を説明する施策を捻出することがだんだんと難しくなってくる事態が懸念されます。