ベネッセ事件後の調査結果が示す深刻な問題
先に述べた営業秘密の漏えい対策に取り組んでいない企業が35.2%に上るという結果とともに、もう1つ驚かされたのは、過去5年間で営業秘密の漏えいが「あり」および「疑われる事例あり」と答えた企業のうち、対策に「取り組んでいない」と答えた割合が31.5%に上ったことだ。
すなわち、過去に情報漏えいした疑いが高いのにも関わらず、31.5%の企業が対策を講じていないというわけだ。そうした企業からは、「退職者が再就職先に情報を持ち出すのは防げない」「対策がわからない」といった声が上がっているという。31.5%という数字とともに、この状況は深刻な問題として受け止めるべきである。
ちなみに、営業秘密の漏えい対策を講じている企業によると、現在取り組んでいる具体的な方法としては、「秘密保持契約の締結」(53.1%)、「情報の管理方針などの整備」(50.2%)、「データなどの持ち出し制限の実施」(46.7%)が上位を占めた。また、今後取り組む対策としては、「情報の管理方針などの整備」(25.2%)、「営業秘密とそれ以外の情報の区分」(20.9%)、「データなどの持ち出し制限の実施」(20.1%)などが挙げられた。
最後に改めて、今回の帝国データバンクの調査結果が非常に深刻な問題だと考えるのは、この調査が7月中旬に発覚したベネッセグループの情報漏えい事件の1カ月余り後に行われたのにもかかわらず、3割を超える企業が何の対策にも取り組んでいないと答えていることである。あまりにも危機感が足りないのではないか。
情報漏えいリスクがあるのは大企業だけとの風潮もまだまだ残っているが、最近ではそうした“脇の甘さ”をつけ込まれた形で中小企業での漏えい事件も増えつつある。とりわけ現時点で対策を講じていない企業は、早急に手を打つべきである。