小さな漁村、大きな野望--「世界のハイテク工場」中国・深センの過去と未来(後編) - (page 4)

Steve Ranger (TechRepublic) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2014-12-26 06:30

 しかし、これらすべてはスマートフォン市場の動きの速さも浮き彫りにしている。欧米市場は飽和点に達しつつあるかもしれないが、新興市場はまだまだ伸び代があるのだ。

 そして、新興市場が注目されるようになっているのはモバイル分野だけではない。Huaweiのような企業の成長は、ハイテクの世界がどのように国際化していくのかを映し出している。ハイテク産業が始まって以来、欧米、特に米国西海岸は技術的なイノベーションの原動力であり、最も重要な市場でもあった。しかし、今後の50年を見た場合、そのいずれもが現状を維持するとは考えづらい。

 このため、深センを出自に持つ企業か、台湾を出自に持つサーバ企業か、経済的に力をつけつつある国を出自に持つ数多くのIT企業かにかかわらず、今後の数十年は新たな競争の波に立ち向かっていくことが、ハイテク業界における最大の課題の1つになるのかもしれない。

 そしてもちろんながら、国際市場に目を向けているのは中国の企業だけではない。米国の企業も中国市場に目を向けている。中国は数多くの競合を生み出す源泉であるとともに、世界最大の消費者エレクトロニクス市場でもある。このためハイテク企業は、中国市場の潜在顧客にアクセスしたいと熱望している。

 例を挙げると、Intelは2014年9月、中国のチップ製造企業に15億ドルを投資すると発表した。その目的は、テクノロジを入手するだけでなく、重要さを増しつつある同国の市場で良い位置に付けるというものだ。また、中国におけるもう1つの巨大企業であるLenovoは、国際的な野望を推し進めるためにIBMの2つの事業を買収し、米国におけるメジャープレーヤーになろうとしている。今後、これらの企業の地理的な拠点を指し示すことはますます難しくなるだろう。

 深センの大型ショッピングモールからそうほど遠くないところに、Windows of the World(世界之窓)という名前の観光施設がある。中国の他の都市にも同様の施設があるが、ここは世界中の名所を集めたテーマパークだ。ピラミッドや凱旋門、エッフェル塔などがあり、亜熱帯の蒸し暑い夜を過ごす場所として家族連れに大人気となっている。

 筆者はこのテーマパークを横目にそぞろ歩きしながら、その景色や施設内にある有名な都市と、深センという知名度の低い都市を対比してふと物思いにふけった。深センはその地で作り出したガジェットを通じて外の世界に大きな影響を与えているにもかかわらず、いまだにあまり知られていない。

 しかし、深センのハイテク企業(中小企業と大企業の双方)が進撃を続けるのであれば、その名が知られるようになる日もそう遠くないのかもしれない。

 ※本記事を執筆したSteve Ranger記者は、Huaweiの招待により深センを取材した。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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