ビッグデータには限界がある
ビッグデータの活用が世界的にITの課題とされており、Amazonなど小売でも取り組みが見られる。だが、鈴木氏は日米の小売におけるアプローチの違いに触れつつ、ビッグデータに対し冷ややかな目を向けた。
ニーズを見抜くのは膨大なデジタルのデータよりも、むしろアナログの店舗のスタッフだと鈴木氏は考える。セブン-イレブンは発注権を店舗に与えているが、これはデータを集めてデータサイエンティストが分析する中央集権型とは対極をなす。
「近くの小学校で運動会があるから、あるいは工事現場ができたからたくさんの弁当が必要とか……。これはデータがないし、地域にいないとわからない」と鈴木氏はその理由を語る。
実際、同社のヒット商品を作ったのはビッグデータではなく”人”のアイデアだ。例えば、セブンカフェ、全国で数億杯が飲まれるという大ヒットになったが、「ビッグデータをひっくり返しても出てこなかっただろう」と鈴木氏。セブンカフェのヒットを受けてドーナツ販売をスタートしたが、これもデータではなく人のアイディアだ。
最大の成功例が恵方巻きだ。「元々は地方にあった習慣で、地方のスタッフがこれを全国でやったらおもしろいんじゃないというアイデアを出した。セブン-イレブンがはじめて全国でやった」という。いまでは節分時にあちこちの小売店が恵方巻きや関連商品を販売している。デジタルなデータよりも、「人間が考えたことを集めたらアイデアが生まれる――これが僕らが考えているビッグデータだ」と見解を語った。
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鈴木氏らチームは現在、各事業会社のバックエンドシステムの統合を進めているところだ。そこではクラウドを活用するが、現在なにをパブリッククラウド、何をグループ内の閉じたグループクラウドに移すか、何をオンプレミスに残すかのマップを作っているところだという。
当面のマイルストーンは2020年に設定している。omni7も完成形になるとみているからだ。鈴木氏の挑戦は続く。