沈没現場の特定後、チームは近距離からの調査を実施するために遠隔操作無人探査機(ROV)を使用した。ただ、Lundgren氏によると「ROVに搭載されているカメラの品質は貧弱なものだった。無傷な船体側面部は確認できたが、砲門は確認できなかった。また、1時間ほど映像を録画したが大砲も確認できなかった。複雑に入り組んだ沈没現場でROVを操作するのは簡単ではない。残骸は3次元形状をなしており、船の木材が上に向かって突き出ていたため、ROVのアンビリカルケーブルを引っかけてしまう可能性もあった。ROVによる調査ではマルス号であるとは確認できず、分かったのは巨大な戦艦だということだけだった」という。
マルス号であると確認するには、人間のダイバーを投入する必要があった。そこで、兄弟であるRichard Lundgren氏とIngemar Lundgren氏、Skogh氏からなる3人のチームが潜水することになった。
彼らが残骸に近づくにつれ、特徴的な大砲が姿を現し始めた。まず、1人のダイバーが照らすライトの中に大砲の影が1つ浮かび上がってきた。そして、その上に折り重なったかたちで大砲が5門、6門、7門と見えてきた。
それでもこの沈没船の正体は確定できなかった。16世紀のスウェーデンの軍艦スヴァーデット号もマルス号の近くで沈んでおり、まだ発見されていなかったのだ。彼らが発見したのはスヴァーデット号だったのだろうか?
沈没船を発見した後、数週間にわたって実施されたダイビングでは、残骸の大砲を中心に調査が進められた。その結果、大砲の一部にグスタフ・ヴァーサの紋章が入っていると分かった。そして、鍛鉄製の後装式大砲が見つかったことで、この船の正体は決定的なものとなった。