テクノロジで迫る沈没船の謎(1)--アンティキティラ島沖に眠る2000年前の船

Jo Best (Special to TechRepublic) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2015-12-29 07:00

 科学者らはロボットや、海中での「iPad」使用、3Dプリントといったテクノロジを活用し、海の底深くに眠っている沈没船を調査し、歴史の闇に光を当ててきている。本記事では3回に分け、「アンティキティラ島沖に沈む紀元前1世紀の船」と、「北極海に沈む19世紀の探検船」「バルト海に沈む16世紀の軍艦」の発見と、その積み荷にまつわる逸話を解説する。

 世界中の海の底には、数多くの沈没船が人知れず静かに眠っている。これらの船は、探検や貿易、戦争といった目的で港を出たものの、目的地に到着することなくタイムカプセルとなり、発見される日を波の下で待ち望んでいる。

 それらのなかには、当時の最先端技術を駆使して建造された最新鋭の船もあった。そして現在、われわれの時代の最先端技術によって、長い間探し求められてきた沈没船が、ついにその姿を現しつつある。

 米TechRepublicは、ここ数年で目覚ましい成果を上げている有名沈没船の調査のなかから3つを選び、それらの調査を実施しているチームから、船体が発見されるまでの経緯や、引き上げられた遺物に隠された秘密の解明にまつわる話を聞いた。まずは、アンティキティラ島の沖で1900年に発見された紀元前1世紀の船の話から始めてみよう。この船の積荷のなかには、1901年に海から引き上げられていたものの、最近まで正体が謎につつまれていた人類史上初のコンピュータが含まれていた。

アンティキティラ島沖に沈む紀元前1世紀の船

 コンピュータ時代の幕開けが、第二次世界大戦中の英国で建造された暗号解読用計算機「Colossus」や、19世紀にバベッジが設計した「解析機関」だと思っている人もいるかもしれない。しかしその認識は誤っている。コンピューティングの出現はイエス・キリストの生きていた時代よりも古く、2000年以上前からクレタ島の沖に沈んでいた、青銅製の小さな機械にまでさかのぼれるのだ。

 紀元前2世紀の終わり頃に作り出されたと考えられている「アンティキティラ島の機械」は、人類史上初のコンピュータだと考えられている。歯車とダイヤルが複雑に組み合わされたメカニズムにより、この機械はカレンダーとして機能し、月の満ち欠けを再現するとともに、日食や月食を予測するために用いられていた。これは時代錯誤な遺物と言える。われわれの知る限り、このメカニズムに匹敵し得る人工物は、向こう1000年間にわたって作り出されることがなかったのだ。

 アンティキティラ島の機械という名前は、この遺物がアンティキティラ島の近海で発見された沈没船から回収されたことにちなんでいる。1900年に発見されたこの沈没船は、紀元前1世紀に海の底に沈んで以来、海綿を採集していたギリシャのダイバーらによって発見され、遺物の数々が引き上げられ始めるまで、そのままの状態で海の底に眠っていた。

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