古代の穀物の痕跡が沈没地点周辺の海底の砂に埋もれている場合、適切なテクノロジを使えば検出できる可能性も残されている。穀物は分解して消え去ってしまっていても、デンプンの痕跡や、プラント・オパール(植物細胞に由来する非結晶含水珪酸体)が残っていれば、高精度の顕微鏡で検出できるのだ。
WHOIのチームは2015年の夏に、金属探知機によって作成されたヒートマップを手に現場に戻り、アンティキティラのさらなる秘密を解くべく、作業を開始した。
Foley氏は「われわれは常にデータを分析し、そのデータを更新している。今年は、ロボットによって作成されたマップから得た極めて精度の高いデータを見るためにiPadを活用することになる。こういったiPadは特殊な筐体に格納され、現場での潜水活動時に対話的にマップを確認できるようになっている」と述べた。
ダイバーはiPadを持って海中を移動し、ヒートマップから得られた興味深い場所を探すとともに、その場所と自らの位置の相対的な関係をチェックする。また、ダイバーは海底に埋もれた金属製の遺物を見つけ出すために、金属探知機も携行する。さらに、プロの写真家とビデオ撮影家を同伴する一方、自らもiPadのカメラでスナップ写真を撮影する。
Foley氏は「これらのデータはすべて、最終的にマップに取り込まれる。これによって、われわれの日々の作業すべてを取り込んだデータマネージャーを手に入れることも夢ではなくなる」と述べるとともに、「目標の1つに、コンピュータ内で後日、現場の仮想発掘/再発掘作業を実現するというものがある。われわれが掘った海底のトレンチを撮影した一連の画像を使って、コンピュータ上で再構成すれば、われわれの作業すべてを間違いなく記録できるようになる」と続けた。
残骸が横たわっている深度では、通常の潜水装備では数分間でタンクの空気を使い切ってしまうため、ダイバーらはリブリーザーという循環式酸素呼吸器を使用して作業することになる。呼気を閉鎖循環させながら、必要な酸素を追加しつつ、二酸化炭素を除去することでダイバーは、通常の潜水装備よりもずっと長い間作業を継続できるようになる。
Foley氏は「人間を潜水させるというのは常に最後の手段となる。というのも、人間は食べ、排泄し、疲れるため、水中作業を効率的に行えない。リブリーザーがあれば、効率の向上は可能だが、それでもわれわれは人間以外に作業を行えない場合にのみ、ダイバーを潜水させたいと考えている」と述べた。