テクノロジで迫る沈没船の謎(1)--アンティキティラ島沖に眠る2000年前の船 - (page 3)

Jo Best (Special to TechRepublic) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2015-12-29 07:00

 残骸の破片は長さ300mにわたって続いており、2つの残骸は連続しているようにも見えた。このためそれらは、1隻の巨大な船が2つに引き裂かれた結果であるとも考えられる。この仮説を検証するためにFoley氏のチームは、今後数回に分けて実施する調査のなかで、最新テクノロジを用いて2つ目の残骸の本当の出自を特定する計画だ。

 調査は2012年以来、毎年続けられており、この夏にアンティキティラに戻ったチームは人間のダイバーとロボットを使って2カ所の間の海底を詳細に調査した。

 同チームはステレオカメラを搭載した自律型無人潜水機を使用している。この潜水機は、SLAM(Simultaneous Localization And Mapping:自己位置推定と環境地図の同時作成)と呼ばれるアルゴリズムを採用し、ステレオカメラからの画像を組み合わせることで海底の極めて詳細な環境地図を作成できる。6月の数日間で、この潜水機は1万500平方mの環境地図を2mmという精度で作成した。またそれとは別に、海底に横たわっている可能性のある、青銅や鉄を含む遺物を検出するために、金属探知機を搭載したROV(Remotely Operated Vehicle:遠隔操作無人探査機)も投入された。

 ROVからの情報は自立型無人潜水機が生成した3D環境地図のデータと重ね合わせられ、夏場の再調査で重点的に調べるべきエリアを判断するためのヒートマップと呼ばれる可視化グラフが作成された。

 金属が密集している場所を重点的に調査することで、アンティキティラ島の機械のさらなる断片を収集できる可能性が高まる(現時点ではまだ全体の半分しか見つかっていない)。こういったものが発見されれば一大ニュースとして報道されるだろうが、ちょっとした手がかりであっても興味深いニュースになるはずだ。

 鉛を含む何らかの遺物が発見されると、チームは顕微鏡レベルのサンプルを採取し、質量分析に回すことになる。世界中から集められたサンプルに含まれる鉛の同位体組成と比較すれば、船が建造された場所や、出発港を絞り込めるようになるのだ。

 前回の調査で引き上げられた青銅製の像の一部(手や足、その他の破片)は、アテネ国立考古学博物館で展示されている。今回の調査では、金属探知機が作成したヒートマップの活用により、前回よりも多くの遺物が引き上げられる可能性もある。

 Foley氏は、像の一部がより多く見つかれば、「芸術の歴史と、同時代における文化の理解に大きく貢献できるだろうが、われわれは像の破片がその他の大きな発見の一部でしかないことを期待している。どういった発見だろうか?それは、われわれには想像もつかない。可能性は無限だ。この沈没船は紀元前1世紀の地中海東部全域における最高の積み荷を運んでいたのだ」と述べた。

 アンティキティラで沈んだ船は、積んでいたアンティキティラ島の機械と同様に、当時でも類を見ないものだ。その船板は古代の船として知られているもののなかで最も厚い部類に入るため、実際の船の長さは200フィート(約60m)以上もあった可能性がある。この大きさは、1805年のトラファルガーの戦いでネルソン提督が旗艦とした戦列艦ヴィクトリー号とほぼ同じなのだ。

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