展望2020年のIT企業

ECサイト構築ソフトから家電などへと事業拡大する新興企業の狙い - (page 2)

田中克己

2017-12-20 07:30

売り上げから利益重視へ転換

 実は、エスキュービズムは約1年前に事業を絞り込んだ。食品流通やレストラン、厨房機器販売などの事業を売却し、ホールディングス制をやめた。結果、EC関連と家電、そして別会社で展開する中古自動車販売の3つの事業になった。特に、流通業向けには、ECサイト構築ソフトからPOS、VR、インバウンドへとパッケージ商品を拡充している。最近は、タブレットを使った音声認識の自動翻訳を開発する。訪日外国人が急増する中で、地方のレストランやタクシーなどが英語をはじめとする多言語で対応できるようにするもの。

 デジタルサイネージやホームページも多言語対応させて、地方都市などにこれら全体をパッケージ化して提案する。7月には、全日空商事と地域情報コンテンツを多言語化したインバウンド支援ビジネスを始めた。「製品を作るのは簡単だが、売るのが難しい」と、藪崎社長はリアルとネットを活用した仕組み作りを自ら積んでいる。

 こうしてトップラインを伸ばし、エスキュービズムの売上高は約55億円の規模に達したという。課題は、3事業の売り上げはそれぞれ20億円近くなったものの、EC関連以外の収益率が低いこと。そこで、藪崎社長は売り上げから利益重視に切り替え、各事業の営業利益を20億円にする策を考え始めている。

 具体策はこれからになる。「例えば家電は、モノ単体の差異化は難しいので、ITを使って勝てるものにする」。少しヒントがある。5月に開設した「異端会議」と呼ぶオンラインメディアだ。業界の常識を打ち破って躍進する経営者らに、藪崎社長らがインタビューし、世の中に新しい気づきを届けるもの。狙いは、シリコンバレー流経営を称賛する風潮に異を唱えること。目の前の顧客の要望に応えて、コツコツと地道に展開する日本的な経営を貫きつつ、新しい領域にチャンレジし、大きな成長を遂げたことを証明したいのだろう。

田中 克己
IT産業ジャーナリスト
日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。

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