日立製作所は3月13日、LANケーブルでインターネットに接続した環境で、事実上暗号解読が不可能なほど高い安全性を持った暗号通信技術を開発し、この技術を搭載した通信装置を試作したと発表した。
現在、秘匿性の高いデータをやり取りする際には暗号通信が行われているが、一般的に利用されている共通鍵暗号方式では、データの暗号化を一つの鍵で行っているため、共通鍵に起因する規則性が見破られ、不正に解読されてしまうリスクがある。また、量子光を利用した量子暗号方式は、安全性が極めて高いものの、光ファイバなどの特定の伝送路でP to Pで直結させる必要があり、さらに伝送路中の光の散乱などにより信号の減衰が生じることから、伝送可能距離が100キロメートル程度に制限されてしまうという問題があった。
今回、日立が開発した装置では、送信機内にノイズ発生機を設置し、ランダムに発生するノイズを暗号通信に必要なデータに加えて送信することで、ノイズの除去方法を知っている正規受信者以外の暗号解読を困難にする。この仕組みは理論上、宇宙年齢(138億年)をかけても暗号解読ができないほどの安全性を持つという。また、光ファイバなどの伝送路も不要で、LANケーブルで接続されたあらゆる地点への通信が可能になる。
日立では、今後、この技術を高いセキュリティが求められるエネルギー、金融、鉄道管理、防衛などの分野へ適用するとしている。