労働市場における人材獲得競争が激しくなっていることを考えれば、従業員体験の向上を目的としたソフトウェアは今後重要な分野になる可能性が高く、多くの競合企業が、この問題にさまざまな角度から取り組んでいる。ただし、この分野の定義は定まっていないのが現状だ。
顧客体験(CX)にはすでに多くの企業が力を入れているが、従業員体験についての取り組みは遅れている。その一因として、市場に毛色の違うさまざまなシステムが混在していることが挙げられる。しかし、従業員体験の向上にメリットがあることは比較的明らかだ。いくつかの例を挙げてみよう。
- エンゲージメントの高い従業員が多いほど生産性は向上し、事業目標に沿った取り組みができる。
- 従業員のエンゲージメントが高ければ、離職率は下がり、配置転換や新規採用にかかるコストも抑えられる。
- エンゲージメントの高い従業員は、顧客ともよい関係を築く可能性が高い。
ここに挙げたのは、比較的定量化しやすいものだけだ。ほかにも例えば、こうした従業員体験を向上させる取り組みは、株価を左右するようなニュースが発生するリスクを避けることにもつながる可能性がある。そもそも、「最高経営責任者(CEO)支持率ランキング」で下位になりたいと思うCEOなどいないはずだ。また、従業員体験を向上させる取り組みからは、人材の発見や維持に役立つさまざまなアナリティクスが得られる。
Gallupは従業員エンゲージメントに関する調査を行っており、その長期的なトレンドについて示している。
しかし、具体的なことになってくると難しい要素もある。従業員エンゲージメントや従業員体験は、人事部門の話なのだろうか、それともマーケティング部門や通信、IT、デジタル変革などにも関係してくるのだろうか?懐疑的な見解を示す専門家もいる。Constellation ResearchのプリンシパルRay Wang氏は次のように述べている。
私に言わせれば、この分野は「Jive」とともに一度死に体になっており、人々はこの分野をもう一度復活させようとしている。その中心は「Teams」や「Slack」だが、エンゲージメントを中心に据えた企業もあれば、もともとコラボレーションやアイディエーション、サポートデスクなどに関するエンゲージメントの強化に利用されるゲーミフィケーションのベンダーも存在する。