新たに発表された英国の政府統計で、同国のデジタル産業部門の輸出は、その半分近くが欧州連合(EU)向けのものであることが明らかになった。
この新たなデータは、今も成長している英国のテクノロジー業界のエコシステムが、欧州市場と強く結びついていることを示している。現在のところ、英国のEU離脱(ブレグジット)の期限は2019年10月31日となっているが、貿易やデータ保護をはじめとして、多くの分野の協力ルールに関して合意が得られるかどうかは不透明なままだ。
英政府のデジタル・文化・メディア・スポーツ省(DCMS)が公表した報告書によれば、2017年に英国のデジタル産業部門が欧州に輸出したサービスの金額は、194億ポンド(約2兆5000億円)に達している。最大の輸出項目は「コンピューターのプログラミング、コンサルティング、およびその関連活動」部門だった。この産業部門の業界は、EUに対して91億ポンド(約1兆2000億円)相当のサービスを輸出していた。英国のデジタル産業部門が輸出しているサービスの40%以上は、EU向けであることも明らかになった。
英国のテクノロジー企業は、ブレグジット後のデジタルサービスの輸出に関するルールの行方を心配している。これは、過去にブレグジットに関して試みられた、英国議会とEUの両方が合意する可能性のある交渉で、この問題が大きく取り上げられたことがないためだ。このため、仮に合意が成立したとしても、サービスを提供している企業は、2つの競合する規制制度に対応せざるを得なくなり、提供地域によってサービスの提供条件を変えなければならなくなる可能性がある。これらの問題すべてが、欧州市場における英国企業の競争を難しくするかもしれない。
国別に見ると、最大のサービス輸出相手国は米国で、2017年のデジタル分野の輸出額は109億ポンド(約1兆4000億円)だった。しかし2位以下には、ドイツ、アイルランド、フランス、オランダが続いており、これらはすべてEU加盟国だ。
英国のデジタル産業部門には、コンピューターハードウェアメーカーから、ソフトウェア開発やコンサルティングまで、さまざまな分野の企業が含まれる。
「DCMS Sectors Economic Estimates 2017: Trade」と題したこの報告書では、デジタル産業分野の企業が輸出した物品の半分以上がEU向けであったことも明らかになっている。英国のデジタル産業部門は93億ポンド(約1兆2000億円)相当の物品を輸出しており、そのうち76億ポンド(約9900億円)を「電子製品およびコンピュータの製造」部門の輸出が占めていた。また、クリエイティブ産業も30億ポンド(約4000億円)相当の物品を輸出していた。