Oracleの戦略は、「Oracle Autonomous Database」の普及や、アプリケーション/データベース顧客の「Oracle Cloud」への移行促進、エンタープライズ向けのケーススタディとしての自社のデジタル変革の利用が中心となっている。
カリフォルニア州サンフランシスコで1週間に渡って開催された「Oracle OpenWorld 2019」が終了した今、同社の戦略の行く末を占うというのは言うほど簡単ではない。そのパラメーターは、クラウドインフラからアプリケーション、データベース、そして最高技術責任者(CTO)Larry Ellison氏による多数の引用や皮肉、同社の未来を疑問視する一部の懐疑的なアナリストに至るまで多岐に渡っている。OpenWorldカンファレンスの開幕数日前には、共同最高経営責任者(CEO)のMark Hurd氏が健康上の理由で休職することが発表された。また、明暗入り混じる結果となった第1四半期決算も発表されている。
OpenWorld 2019を終えた今、同社の戦略は以下を軸にしていると考えられる。
- Autonomous Databaseの製品群の拡大と、既存顧客の同データベースへの移行。セキュリティやアップデート、管理、パッチ適用の自動化による利点は明白だ。ただ、企業がAutonomous Databaseを試験的な使用から、本番環境での使用に踏み切るかどうかは明白ではない。また、Oracle製品の普及にはデータベース管理者の力が大きかったわけだが、現在の同社は作業の自動化に向けて進んでいるという点も不確定要素だ。
- 「Oracle Database」から「Oracle Cloud Infrastructure」(OCI)への移行。これについては、効率の向上に加えて、さらなる採用に向けた自社事例の紹介に焦点が当てられる。NetSuiteはOracle Cloudに移行した。またOracleはOracle Cloudへの移行による自社の利幅と財務状況の向上を計画している。
- 既存の統合基幹業務システム(ERP)/アプリケーション顧客のSaaSへの移行。詰まるところ、Oracleは幅広いクラウドスタックプロバイダーというよりは、SaaSプロバイダーになる可能性が高い。OracleはSaaS分野での顧客獲得をアピールしているものの、Ellison氏が述べたようにSalesforceの対抗として自社を位置付けるというのは、顧客の目から見れば高価すぎるはずだ。
- より顧客フレンドリーなプロバイダーとしてのリブランディング。Oracleは同社ソフトウェアの伝道という点では社内を重視するようになっており、そうした動きが営業政策上プラスになると考えている。この取り組みは「Oracle@Oracle Experience」と呼ばれている。同社のエグゼクティブバイスプレジデントであるDoug Kehring氏は、Oracleを「Oracleが自信を持って勧められる最高の顧客事例」にすることを目指していると述べたうえで、「Oracle@Oracleのミッションは、われわれの顧客のような社外ユーザーだけでなく、自社内のオーディエンスに対して、Oracle Cloudの活用によって得られるメリットを分かってもらう(とともに、それを例証できるよう支援する)ことだ」と述べた。
これらの点に加えて、共同最高経営責任者(CEO)Safra Catz氏の言葉を考え合わせると、Oracleは次期会計年度で売上高の増大を図る姿勢を示しており、こうした成長は統合スタックによってけん引されると考えられる。言い換えれば、Oracleは「スイートは必ず勝利する」という持論を繰り広げようとしている。