Amazon Web Services(AWS)の成果指向エンジニアリング(Outcome Driven Engineering)担当ゼネラルマネージャーであるSarah Cooper博士は、興味深い仕事をしている。同氏のチームは、デジタル化を進めようとしているさまざまな業界に飛び込んで、その領域の専門家と「マインドメルド」を行っているのだ。
この他業種との連携は、機械学習や人工知能(AI)、アナリティクス、IoT(モノのインターネット)などの技術を活用して、デジタル化が遅れている業界を改善する技術を生み出している。
筆者は、Cooper氏にデジタルトランスフォーメーション(DX)について尋ね、AWSのイノベーションに対するアプローチや、トレンドを見つける方法について話を聞いた。この記事では、同氏へのインタビューの要点を紹介する。
Sarah Cooper氏
AWSの結果指向エンジニアリングの目的。同氏の部門が目指しているのは、顧客と協力して「特定の業界向けの、デジタル化の障害を取り除く新たな分野の製品」を作ることだとCooper氏は言う。AWSの成果指向エンジニアリングチームは、この目標を達成するために、しばしばDXの推進に苦戦している業界に飛び込んでいる。
AWSには、Siemensを統合パートナーとして、Volkswagenとインダストリアルクラウドを構築した経験がある。Volkswagenは、このクラウドをAWS上に構築し、インターフェースをSiemensのシステムとリンクした。「VolkswagenとSiemensはこの業界の経験を豊富に持っていた。この経験で分かったことは、工場に同じものは2つとないということだ」とCooper氏は話した。
ニュージーランドのエネルギー企業であるVectorも、成果指向エンジニアリングチームと連携したAWS顧客のひとつだ。Cooper氏によれば、このプロジェクトはさまざまな再生可能エネルギーに最適化できる、柔軟かつ動的に変化する電力網を生み出すためのものだった。「電力網を集中型から分散型に変えようという世の中の動きがある」とCooper氏は言う。「電力網はもっと柔軟にならなくてはならない」
共同イノベーションプロジェクトはAWSの製品になるのか。Cooper氏は、同氏のチームが手掛けたプロジェクトが製品化される場合もあるが、多くの場合は、顧客のためのカスタムシステムを作るのが目的だと述べている。「私たちは幅広く業界の変革を目指しているが、価値のあるものとなりうる要素が生まれてくる場合がある」と同氏は説明している。「製品を生み出すことは、共同開発にとっても広範な業界にとっても価値のあることだ」
AWSは成果指向エンジニアリングで何を提供しているのか。Cooper氏によれば、成果指向エンジニアリングでは、Amazonの現場チームやサービス組織、専門知識を提供しているという。Amazonは複数の事業を展開している。AWSは、同社のイノベーションを推進するためのノウハウや人材を提供し、そのノウハウを各領域の専門知識と組み合わせて活用することを目指している。
「私たちの共同イノベーションに対する前提は、AWSにはイノベーションを行うためのメカニズムがあるということだ」と同氏は言う。「パートナーが私たちのやり方を取り入れる必要はないが、試してみたいという企業も存在する」