本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、B&DX 代表取締役社長の安部慶喜氏と、マカフィー セールスエンジニアリング本部 本部長の櫻井秀光氏の発言を紹介する。
「DXとはデジタル(D)を活用した企業の変革(X)、肝心なのは“X”だ」
(B&DX 代表取締役社長の安部慶喜氏)
B&DX 代表取締役社長の安部慶喜氏
企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援に特化したコンサルティング会社として2021年1月1日に発足した新会社「B&DX」がこのほど、設立の狙いや事業内容についてオンラインで記者説明会を開いた。
新会社のトップには、アビームコンサルティングで20年間、経営コンサルタントとして従事し、数年前からRPA(ロボティックプロセスオートメーション)とAI(人工知能)の組み合わせによる働き方および業務改革、そしてDXによる企業変革の分野の第一線で活躍している安部氏が、アビームを2020年12月に退社して就任。冒頭の発言は今回の会見で、同氏が強調した「明言」である。
安部氏が会見で説明した新会社の概要については関連記事をご覧いただくとして、ここでは、冒頭の発言に至る今回の動きの背景と、同氏のここ数年の活躍ぶりを紹介したい。
図1に示した新会社設立の背景は、会見での安部氏の説明で筆者が最も印象深かった内容だ。日本企業のDXは、なぜうまく行かないのか。同氏はうまく行かせるための要件として、「業務改革」「トップのコミット」「意識改革」の3つを挙げ、すなわち「DXとはデジタルを活用した企業変革である」と強調した。
図1:新会社設立の背景(出典:B&DX)
そして、その考え方を基に新会社のミッションとして「日本企業のトランスフォーメーションを実現する」ことを掲げた。このミッションには、安部氏および同社メンバーの思いが凝縮されている。というのは、ここで言う「トランスフォーメーション」は、ビジネスとデジタルの両方の「変革」を指しているからだ。冒頭の発言の意図もここにある。
もっと言えば、そうした思いをワンフレーズで表しているのが、B&DXという社名だ。DXの前にあるBは、ビジネスの頭文字である。安部氏をはじめ同社メンバーのストレートな思いを強く感じるところである。
さて、そんな安部氏のここ数年の活躍ぶりを見るために、同氏がまずRPAの活用で注目され始めた頃からの本サイトでの登場記事をピックアップしてみた。2017年12月11日掲載「RPA活用の盛り上がりは本物?」、2018年3月12日掲載「RPA活用がもたらす企業間のデジタル格差」、2019年3月19日掲載「成果の上がるRPAのアプローチとは」、2020年10月15日掲載「日本企業のDXを阻むのは『21の習慣病』」など、どの記事も興味深い内容である。
筆者もRPAとAIの組み合わせやDXの捉え方、推進の仕方において、安部氏の見識や見解を大いに参考にさせてもらっている。そうした思い入れもあったので、今回の会見の質疑応答で、「完全に独立した自分たちの会社で、思い切って動き回りたいという気持ちか」とあえて聞いてみた。すると、安部氏はこう答えた。
「そうですね。なんとか日本企業のDXを…」
このあと、力の入った言葉が続いたのは想像していただけるだろう。ストレートにエールを送りたい。