アビームコンサルティングは10月14日、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を阻む要因とその解決策について説明会を開催した。スピーカーは、同社 戦略ビジネスユニット Business & Digital Transformation セクター長 執行役員 プリンシパルの安部慶喜氏が務めた。
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安部氏はまず、新型コロナウイルス感染症によるビジネス環境の変化を説明。現在を「ウィズコロナ」、今後を「アフターコロナ」とすると、ウィズコロナでは感染防止のため、半ば強制的かつ最大限、バーチャルのコミュニケーションを行っている。一方アフターコロナでは、バーチャルとリアルを状況によって使い分けるという。またウィズコロナではデジタル化への投資が一時的に凍結されたが、アフターコロナでは元々行う必要があったDXの取り組みは進んでいくとしている。
こうした中、企業は物理依存のビジネスから脱却し、自社サービスを非接触でも提供できるようにするとともに、その質を向上させることなどが必要となる。だが、安部氏は「日本のDXは海外よりも大きく遅れている」と指摘。スイスの国際経営開発研究所が2019年に発表した「世界デジタル競争力ランキング」において、日本は63カ国中23位で、OECD(経済協力開発機構)に加盟する37カ国の中では18位だった。
この問題の要因は、技術力や資金力ではないという。実際、日本は1956年からAI(人工知能)、1999年からIoT、2001年からビッグデータの調査/検討を行ってきた。DXを阻む真の理由について、安部氏は「独特な経営スタイルとそれに伴う人材マネジメント」だと述べた。
日本は戦後、物資が不足する中「ものづくり中心の単一事業」を行ってきた。売り上げの向上やシェアの拡大を追い求め、機能の追加や原価の低減、経営資源(ヒト/モノ/カネ)の確保に取り組んできた。こうした経営スタイルは、戦後約50年間成功を収めてきたという。
だが1995年以降、大量消費社会が終わるとともに、少子高齢化による国内市場の縮小が見られ、それまでの成功モデルが機能しなくなった。加えてデジタル時代は環境の変化が速く、予測不可能な時代だと言われている。しかし日本では、いまだに過去の成功モデルから脱却できていない企業が数多く存在するという。アビームコンサルティングでは、過去の成功モデルにとらわれていることを「習慣病」と名付け、これにより「変革する力」が弱まっていると指摘。そしてこの習慣病こそが、DXが進みづらい本質的な理由だとしている。