カスタマーサービスやカスタマーサポートの部門統括者は、デジタルチャネルやデジタル機能に多額の資金を注ぎ込んでいるが、今日の顧客が何を求め、どのように行動しているかについて、5つの誤った通説に固執している。Gartnerが明らかにした。
同社によると、デジタル中心となる今後に向けた資金投入をより良いものにするには、サービス部門リーダーは、これらの通説とその根本的原因、実際の状況をよく理解することで、顧客に素晴らしい体験を提供し、長期的なロイヤルティーを築くことを効果的に実施する必要があるという。
Gartnerが示した誤った通説とそれに関する解説は以下のようになっている。
通説1:デジタルチャネルを提供して普及させれば、顧客はすぐに取り入れる。
セルフサービスは、多くの顧客にとって、最短距離の問題解決策であることが多い。そのため、サービス部門統括者は、セルフサービスを提供して普及させれば、顧客が絶えず利用するだろうと考えがちだ。しかし、顧客は、過去に利用した支援チャネルに戻ってしまうことが多く、セルフサービスの利用を避けたり断念したりといった結果になるという。
Gartnerの調査によると、サービスジャーニーをオンラインで始め、セルフサービスのようなデジタルチャネルに顧客を誘導する機会を提供しているケースは多いという。支援サービスの問い合わせ件数を減らすため、サービス部門はSEOを駆使し、セルフサービス機能を備えた固有のサービスページに顧客を誘導する必要がある。
通説2:チャネルの切り替えは、顧客満足度の低下と顧客離れを招く。
チャネルを切り替えるたびに、顧客はより多くの時間と労力を費やさなければならず、最終的にいら立ち、リテンションの低下、ネガティブな口コミを発生させると考えられている。しかし、顧客は、1つの継続的なやりとりで問題が解決されるのであれば、チャネルの切り替えを気にしない。
先進的なサービス部門では、顧客を問題に最適なチャネルに誘導することで、カスタマージャーニーを意図的に演出している。別のチャネルへの切り替えや転送が必要とされる場合、このような組織ではカスタマージャーニーの内容も確実に転送し、解決までの時間を短縮するとともに、顧客が断念してしまったり、別の対応を必要としたりする可能性を低減する。
通説3:優れたサービス体験により、顧客は今後もその企業とのビジネスを望むようになる。
ほとんどのサービス部門は、顧客がそのサービスに非常に満足し、サービスジャーニーも容易であったなら、自社の顧客であり続け、さらなるビジネスを望むことを選ぶと考える。しかし、必ずしもそうではない。
サービスでのやりとりが良いことは、顧客が離れるのを防げるかもしれないが、顧客を維持するのには不十分だ。Gartnerの調査によると、顧客がロイヤルティーを最終的に示すのは、サービス体験そのものではなく、企業が提供する製品やサービスだという。そのため、企業は、顧客が製品やサービスからより多くの価値を引き出せるようにする方法にもっと集中すべきだ。
通説4:プロアクティブなサービスは、カスタマーサービスへの連絡を不要にし、コール数を削減する。
顧客が問題を抱えていることに気づく前に問題を予測して解決する、プロアクティブなサービスを導入しているサービス部門は多い。不必要な問い合わせを防ぎ、顧客の手間を省けると考えられている。理論的には、この戦略は正しいが、現実には、プロアクティブな働きかけは顧客の行動に正反対の効果をもたらす。
「プロアクティブなサービスは、問い合わせ数とコストを絶えず削減するためのものではなく、顧客体験の成果を向上させるものだ」とGartnerのカスタマーサービス&サポート担当バイスプレジデント兼アドバイザーであるBrent Adamson氏は述べる。「プロアクティブなサービスは、顧客ロイヤルティーの向上に効果的な戦略だが、サービス部門は、プロアクティブなサービスを自社のより広範なサービスチャネル戦略に統合し、コストを管理する必要がある」
通説5:顧客は、カスタマーサービスのチャネルと情報を何よりも求め、信頼する。
サービス部門統括者は、問題が発生すると顧客は本能的にカスタマーサービスに連絡してくると思い込んでいる。しかし、大多数の顧客は、カスタマーサービスへの問い合わせを最後の手段と考えている。特にミレニアル世代やZ世代の顧客ではそのような傾向があり、問題解決のためにサードパーティーサイトを利用することが多くなっている。サービス部門統括者は、検索やサードパーティーチャネルの利用を考慮してチャネル戦略を策定する必要がある。
以上5つの通説についてAdamson氏は、「近年、サービス部門統括者は、顧客に低コストでより良いサービス体験を提供するため、デジタルチャネルやデジタル機能への資金投入を加速させている」とした上で、「しかし、チャネルが提供する内容が進化すれにつれ、顧客のチャネル利用も変化する。そのため、サービス部門は顧客の行動傾向を常に把握し、将来のチャネル戦略に反映させる必要がある」と指摘している。