コロナ禍に伴う生活様式の変化により化粧品業界が苦戦する中、日本ロレアルは2021年度1~4月の売上高が前年同期比8%増、「LANCŌME(ランコム)」などのラグジュアリー化粧品ブランドを扱うロレアル リュクス事業本部も同4%増だった。
ロレアル リュクス事業本部の成長の背景には、デジタルを活用したCX(顧客体験)の向上があるといい、この取り組みは同事業本部のCXチームとデジタルチームが連携して進めている。本記事では、オムニリテール部CXシニアマネージャーの三木理寛氏とデジタル部担当者に、オンライン接客の施策や従業員へのデジタル教育について話を聞いた。
ロレアルは2010年頃からグローバルでデジタル化を進めてきたが、EC(電子商取引)などのチャネルが増える中で顧客とのコミュニケーションが分断されてしまったといい、現在はブランドの担当者が一丸となって一人ひとりの顧客とシームレスな関係を築くことを目指している。
このスタンスのもとコロナ禍では、美容部員によるライブコマースやチャットでのカウンセリングなど、オンライン接客を強化してきた。
ライブコマースは各ブランドの公式サイトで定期的に実施しており、「Instagram」や「LINE」の公式アカウントなどを通して告知している。
ライブコマースでは毎回数多くのコメントが寄せられ、その中には顧客へのアプローチ改善につながるものもある。例えば、キット(複数の商品をセットにしたもの)にリップやファンデーションを入れることがあるが、「キットは気になるけど、リップの色味が自分には合わない」といったコメントが寄せられ、「人によって選ぶ品番が異なる商品はキットに入れない方がいいかもしれない」という気付きがあったそうだ。
デジタル部担当者は「ある品番が売れ筋だからキットにしようというのは、メーカー側のエゴとも言える。これまでも現場の美容部員が顧客の意見を本社に伝えるフローはあったが、ライブコマースによって本社の従業員もリアルタイムに把握することが可能となった。今後は、頂いた意見を素早くビジネスに反映させなければならない」と語る。
「美容部員の方々は、ネット上に自分自身をさらすことについて抵抗はなかったか」と聞いたところ、三木氏は「全くなかったことはないと思う。ただ、美容部員たちはお客さまとコミュニケーションを取り、売り上げにつなげることがオンラインでもできることにモチベーションを感じている。『こういうやり方もある』ということを身をもって感じているのではないか」と話す。