リユーステックで偽物排除に挑む--コメ兵が開発・導入した「AI真贋」とは

大場みのり (編集部)

2020-10-27 07:00

 中古品の買取/販売事業を行うコメ兵は「AI真贋(しんがん)」を開発し、8月25日からKOMEHYO名古屋本店に導入している。このAI(人工知能)は、真贋(本物か偽物か)と型番(モデル名などの製品情報)を判定する。

 AI真贋の利用方法は、鑑定士がマイクロスコープで品物の数カ所を数枚ずつ撮影し、真贋を判定する。判定結果には、「REAL(基準内)」「HOLD(保留)」「FAKE(基準外)」の3パターンがある。型番判定では、専用のアプリをインストールしたスマートフォンで、品物を正面から撮影。約12モデルが候補として表示され、鑑定士が該当するものをタップすると、その情報がアプリに自動で入力される。

 現時点でAI真贋に対応しているのは「LOUIS VUITTON」のバッグ/財布/小物(名刺入れやキーケース)で、判定精度はモデルによって変動があるものの、基本的には99%だとしている。最初の対応ブランドをLOUIS VUITTONにした理由は、ブランドバックの中で流通量が多く、流行のサイクルが比較的長いからだという。

AI真贋を活用した鑑定のイメージ(出典:コメ兵)
AI真贋を活用した鑑定のイメージ(出典:コメ兵)

 コメ兵の鑑定士は通常、「真贋判定」「型番判定」「状態チェック」「買取金額の算出/説明」という一連の流れを1人で行う。その中で、顧客との会話が発生しない真贋/型番判定の業務をAIが補助することで、接客に集中したり、顧客の待ち時間を短くしたりできると期待される。

 AI真贋の開発全体を管理するのは、コメ兵 執行役員 経営企画本部長などを務める山内祐也氏。開発の背景について、山内氏は「業務の効率化というよりは、従業員の満足度やサービス品質の向上を目指しています。当社には“生きがいのある職場を作る”という経営理念があるのですが、生きがいを感じるのはどんな時かというと、何かを調べるといった“作業”をしている時ではないはずです」と語る。

「お客さまも初めて持ち物をお売りに来る際は、『怖い人が来るのではないか』『ちゃんと売れるだろうか』などと緊張されています。リラックスしてもらえるよう、あえて査定とは関係のない話をすることもあり、そうした柔軟なコミュニケーションは人にしかできません。もちろん、話をしたくないお客さまにはおとなしくしていますが、そうした判断も作業にかかりきりでは難しいでしょう」(山内氏)

 コメ兵が近年進めている海外展開も理由の一つだ。山内氏は「現地のスタッフにわれわれのノウハウをそのまま伝えると、“ノウハウの切り売り”になってしまう」と話す。ノウハウの伝達には膨大な時間や労力がかかる上、海外にはブランド品の鑑定ができる人材が少ないため、一通りノウハウを学んだら短期間で辞めてしまう人もいるという。こうした背景から同社は、ノウハウをシステムに組み込むことで流出のリスクを抑えつつ、事業規模を拡大することを計画している。

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