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クレディセゾン、DX戦略を発表--顧客と社員の「体験」を追求する企業に

國谷武史 (編集部)

2021-09-09 06:00

 クレディセゾンは9月7日、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する「CSDX(Credi Saison Digital Transformation)戦略」を発表した。デジタル技術の活用でビジネスの変革と転換を図り、顧客と社員の「体験」を追求する人材、組織、文化の醸成が特徴となっている。

 8日の説明会では、取締役 専務執行役員 最高技術責任者(CTO)兼(最高情報責任者)CIOの小野和俊氏が戦略の詳細を紹介した。小野氏は、旧Sun Microsystems、自身が起業したアプレッソ、アプレッソと資本・業務提携したセゾン情報システムズを経て、2019年3月に入社。約2年半にわたるサービスや業務の改善、変革などの取り組みをまとめ、全社的なDX戦略として今回のCSDXを策定した。

クレディセゾン 取締役 専務執行役員 CTO兼CIOの小野和俊氏
クレディセゾン 取締役 専務執行役員 CTO兼CIOの小野和俊氏

 CSDXは、新サービスや既存サービスの改善などを通じ、その体験にまつわる顧客の満足度を高めて利用促進を図り、同社事業を成長させていくもの。同時に、目的の実現においてこれを担う社員の働きやすさや働きがいといった「体験」を変えていくことを不可欠とし、目的実現に資するテクノロジーの活用とDXを推進する人材、組織、文化の醸成に取り組む。

 小野氏は、「DXではテクノロジーが前面に出てしまい、DXが進まない背景に、テクノロジーを使うことが目的化してしまう状況がある」と指摘、CSDXにおいては「顧客と社員の体験を変えていくことに貢献しないテクノロジーは利用しない」と話した。

 戦略の骨格は、顧客体験(Customer Experience:CX)の領域が「事業創出」と「事業共創」、社員体験(Employee Experience:EX)の領域が「デジタル開発プロセス」と「デジタル基盤強化」になる。ビジネスにまつわるCXのためにまずEXに取り組むアプローチであり、小野氏は「バイモーダル」「内製化」「人材」をキーワードに挙げた。

クレディセゾンの「CSDX戦略」の概要
クレディセゾンの「CSDX戦略」の概要

 同社の本業の金融サービスは、信頼と安定、安全が最優先される。ITにおける開発やシステム構築、運用も同じで、米Gartnerがその性質を「モード1」と命名する。一方、デジタルを活用した新サービスでは、先進性や将来に備えた拡張性、柔軟性、競争優位のためのスピードが優先され、「モード2」と呼ばれる。モード1とモード2の性質には相反するところがあるが、必要に応じて組み合わせることを「バイモーダル」と呼ぶ。

 また、ITシステム開発の外部委託は、プロジェクト進行などに時間を要し、多重構造のためコストも高くなりがちで、ITのノウハウが発注企業側に蓄積されにくいとする。モード2の新サービス開発などにあまり向いていないとされることから、できるだけ自社開発(=内製)する能力が必要になる。小野氏は、「専門リソースを活用できる外部委託のメリットを生かしつつ、内製もできるように選択肢を広げてきた」と述べる。

 人材の取り組みでは、バイモーダルや内製化に基づき、技術やデータに関する能力に応じて「コアデジタル人材」「ビジネスデジタル人材」「デジタルIT人材」の3つのタイプを定義。コアデジタル人材はITエンジニアやデータサイエンティスト、サイバーセキュリティなどのエキスパート、ビジネスデジタル人材はIT活用のリテラシーを有する総合職など、デジタルIT人材は分野特化のドメインエキスパートになる。

 コアデジタル人材については、これまでシステムインテグレーターや大企業などのIT部門、スタートアップやベンチャーなどの人材を採用し、日々の仕事やコミュニケーションを通じてバイモーダルを醸成している。ビジネスデジタル人材は、教育研修などの機会を通じて育成を進める。全社員に占めるデジタル人材の割合は3%ほどだが、2022年度は2倍の6%に高める目標とのこと。「コアデジタル人材は不可欠であり、コアデジタル人材を1人増やすことができれば、ビジネスデジタル人材を2人育成できるといったことが分かってきた」(小野氏)

 さまざまなバックグラウンドを持つ人材やバイモーダル文化により、戦略の骨子の「デジタル開発プロセス」として、従来ITと先進デジタルのリソースが融合する「グラデーション組織」が形成されているという。そして、新サービスなどの構想から開発、評価までを事業部門と共同で作業していく「伴走型内製開発」を実践。これにより直近では、コンタクトセンターの2000人のオペレーターが利用するFAQシステムをわずか3カ月で構築した。

 EXのもう一つの骨格となる「デジタル基盤強化」では、クラウドサービスの利用を広げている。現在はAmazon Web Services(AWS)の利用が中心だが、マルチクラウドで2025年度までに8割のシステムをクラウドに移行させる。また、用途に応じてSlack(コミュニケーション)やトレジャーデータ(データ基盤)、DataRobot(与信での人工知能利用)、Teradata(データ分析)などをベストオブブリードで導入している。

 CX領域の骨格となる「事業創出」では、小野氏が企画したという「セゾンのお月玉」サービスや、セゾンカードのデジタルアプリ、電子クーポンなどのさまざまなプロダクトを順次リリース中。デジタル独自あるいは物理的なクレジットカードも活用するデジタルとアナログのハイブリッド型など新旧を織り交ぜた顧客体験を提供する。

 また、セゾンカードアプリでは150社以上のサービス連携が行われている。骨子の「事業共創」は、ベンチャーへの出資を含むオープンイノベーションの取り組みを推進している。

 同社では、CSDX戦略を推進する専門機関「CSDX推進会議」を経営層直下に設置し、月次に関係者が戦略の推進状況を共有したり施策などの検討を行ったりしているという。戦略推進の部門が小野氏の所管する「テクノロジーセンター」で、各事業部門や管理部門と連携して施策を実行している。

 加えて、CSDXの実績と目標を数値化する。2022年度は、顧客とデジタルチャネルでの接触機会を前年比5%増の80%、ネットプロモータースコア(NPS)の5ポイント上昇、年1回実施する社員アンケートでの満足度10ポイント増加、業務で使う紙の量の10%削減といった指標と目標値を設定。CSDXの成果をだれもが実感できる工夫をしている。

 小野氏は、「お客さまのお金に関わる金融サービスは、絶対に失敗が許されない文化の世界であり、その中にデジタルのモード2の要素や動きなどを融合させていくことは大変。だが、当社は幸いにも柔軟で自由に挑戦できる企業文化があり、クリアできると考えている」と述べた。

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