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記事集:クラウドのネットワーク監視

経済のデジタル化がもたらす企業ITの“バイモーダル”が目指すもの

田中好伸 (編集部)

2016-01-03 07:00

 モバイルが普及するとともに、TwitterやFacebookなどのSNSに自分の気持ちや行動を投稿することは当たり前であり、そうした行動に違和感を持つことは少数派というのが、今の社会の実像だ。モバイルからネットにアクセスするという行動は、個人の経済行動を変化させてしまったと言える。ネットが普及する以前の“情報の非対称性”はかつてのように見ることがなくなってしまった。つまり、企業から製品やサービスを購入する消費者は、溢れかえるほどの情報の中から自分にとって有利な選択肢を簡単に獲得できるようになっている。

 2007年の「iPhone」登場以降、静かに社会や経済の状況を変えつつあり、その状況変化は停まることなく今も進みつつある。

 この変化を企業ITの領域で言えば、“ITコンシューマライゼーション”という言葉が相応しい。つまりは「スマートフォンだと気持ちよく、ストレスなく情報にアクセスできるのに、なぜウチの会社の情報システムはこんなにも使いにくいのか」というエンドユーザーの率直な感想だ。

 スマートフォンやタブレットといったモバイルの普及とともにSNSが生活の一部となっている、状況の変化を企業の外側という社会一般に目を向けて分かりやすく理解できるのが“経済のデジタル化”という言葉だ。経済がデジタル化しているという事実を端的に示しているのが、日本での電子商取引(EC)化率の拡大だ。

 経済産業省の統計によると、2013年の日本の消費者向けEC市場規模は前年比17.4%増の11兆1160億円。2008年が6兆890億円であり、5年でほぼ倍増したことになる。それでも、2013年の消費者向けの小売業やサービス業でのEC化率は3.7%となっている。2008~2013年の成長率は10~20%と高いことから、今後もデジタル化の動きは着実に進むと見ることができる。

 経済産業省の統計は企業間のEC市場も対象としている。TCP/IPベースでの成約金額は、2013年で186兆3040億円(EC化率は17.9%)、TCP/IP以外のものを含めた成約金額は269兆3750億円(EC化率は25.9%)となっている。成長率は消費者向けほどではないが、EC化率を見れば、企業間取引でもデジタル化が進んでいることが分かる。

 経済のデジタル化が進んでいるという状況を示す、もう一つがUberやAirbnbの成長だ。シェアリングエコノミーの代表とも言えるUberやAirbnbの存在は、ITを活用することで、これまで存在しなかったまったく新しいビジネスを興せるという期待を人々に抱かせるようになっている。

異なるシステムの性格

 経済のデジタル化が進むのと同期するかのように認識されつつあるのが、『キャズム』の著者であるGeoffrey Moore氏が提唱した“System of Record(SoR)”と“System of Engagement(SoE)”というシステムの性格の違いだ。

 SoRは統合基幹業務システム(ERP)に代表されるように、顧客が製品やサービスを“買ってから”を処理、格納するためのものだ。一方のSoEは、顧客情報管理システム(CRM)やマーケティングオートメーション、SNSを通じて消費者向けに情報を提供するといったように、顧客に製品やサービスを“いかに買ってもらうか”を狙うものだ。

 従来のIT部門は、SoRだけを担ってきたと表現できる。そこで求められるのは安定性や信頼性である。“いかに買ってもらうか”を担うのは、経済がデジタル化する前であれば、顧客との接点は営業やマーケティングといった部門、あるいは卸売業や小売業など人間の手を介するものだった。だが、経済がデジタル化しつつある現在、顧客とのタッチポイントは依然として人間の手を介するところもあるが、ウェブやモバイル、ソーシャルといった領域も無視できなくなりつつある。

 このSoRとSoEという2つの関係の相似形とも言えるのが、Gartnerが提唱する“バイモーダル(2つの流儀)”だ。バイモーダルは企業の中でのITの意味、IT部門のあり方などに変化を迫る考え方と表現できる。

 ソニーグループで最高情報責任者(CIO)を務め、2012年にガートナー ジャパンに入社し、一般企業のCIOを対象にした「エグゼクティブプログラム(EXP)」グループのバイスプレジデント兼エグゼクティブパートナーである長谷島眞時氏は、バイモーダルの背景として、「ビジネスからのITに対する期待値が変わってきた」ことを挙げている。

 「昨日のビジネスが明日も同じように続くと考える経営層は少なくなっている。GoogleやFacebookなどが突如として出現し、そうした企業がビジネスの新しい競合になり得ると経営層は考えているからだ」(長谷島氏)

 ITコンシューマライゼーションや経済のデジタル化などの変化から、企業ITに対する期待値も変わっている。これがバイモーダルに至る流れだ。UberとAirbnbが既存の業界にどのような衝撃をもたらしているかを知っている企業経営者であれば、デジタルの潜在能力を理解しているだろう。

 米本社フェローでリサーチ部門でIT管理などの領域を担うバイスプレジデントを務めるDave Aron氏は、CIOを対象にした意識調査で「4割の企業がバイモーダルを導入しようとしている」という実態を挙げて、経済のデジタル化が大きく進む今後、「企業はバイモーダルを採用しなければならない。バイモーダルが生き残る唯一の道」と主張する。

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