モード2は分離した方がいい
Gartnerは、バイモーダルについて、「2017年までにIT組織の75%がバイモーダルの能力を備えることになる。そのうち、半数の組織では混乱が生じる。その主因は文化的な問題に対処しないことにある」という予想を明らかにしている。
これまでに見てきたように、モード1とモード2では、システムの性格が異なっており、ユーザー部門がシステムに求めるものも異なり、その開発や運用管理のアプローチも異なる。このことから、システムを担う側のIT部門の志向も変わらざるを得ない。Aron氏はIT部門の違いとして「モード1は武士、モード2は忍者」とスタイルが異なると表現する。

ガートナー ジャパン EXPグループバイスプレジデント兼エグゼクティブパートナー 長谷島眞時氏
信頼性を重視するモード1では、自分のものとなった領地や報酬を死守する武士のようなスタイルが重要ということだ。対するモード2では、何が必要なのかどんなものが有効なのかを探ることが重要であるため、機動力(つまりスピード)が最重要とする忍者が必要になる。
モード1とモード2のそれぞれで理想とされるエンジニアの姿は異なる。このことからGartnerでは、モード1とモード2の間にある文化的な問題を解決する必要があるだろうと提唱している。
モード1では、信頼性が第一という信条の“運営者(オペレーター)”が必要になっている。運営者が重視するのは、効率性や生産性、投資対効果(ROI)であり、社内顧客であるユーザー部門の満足度を追い求める。
モード2では“革新者(イノベーター)”が必要だ。革新者は最新の技術や製品が好きな“新しがり屋”であり、新しいものがどんな風に活用できるかを常に考えている。革新者はまた、不確実性やビジネスリスクをあまり重視しない。怖れているばかりでは新しいものを見つけられないからだ。
このように運営者と革新者は志向するものがかなり異なっており、文化も異なっていることが分かる。そこでGartnerはバイモーダルでは“守護者(ガーディアン)”の存在が必要ということも提言している。守護者は、運営者と革新者の調整役を担う。
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Gartnerは、バイモーダルの能力を備えるIT部門は、運営者と革新者、そして守護者という3つのサブカルチャーを理解する必要があり、3つのサブカルチャーを組織内に埋め込む必要があると提言している。
このバイモーダルを成功させるためのひとつとして「最初はモード1とモード2のチームを分離すべき」(長谷島氏)ことを推奨している。モード1とモード2は志向するものや文化が異なっているため、同じ組織に同居させておくと、モード2での意識や人員が育ちにくくなるためだ。
「リスクを少なくして安全運転を心掛けるモード1の場合、時間をかけても正確さを追い求めるウォーターフォールが基本だ。新ビジネスにはスピードが第一と考えるモード2が相容れないことが往々にしてあり得る。モード2はまず初めに分離して、スモールスタートで始めて、モード1から守る必要がある」(長谷島氏)