2014年にGartnerが提唱した「バイモーダルIT」という概念には、ネガティブな見方も多い。専門家の中には、運用とイノベーションに並行して取り組むという、バイモーダルIT(2つの流儀のIT)のフレームワークは、単なる最高情報責任者(CIO)のベストプラクティス以上のものではないと言う者もいる。バイモーダルITは有効な概念なのだろうか。それとも、業界の空虚な流行語の1つにすぎないのだろうか。
クラウドプロバイダーであるRackspaceが最近主催したパネルディスカッションでは、バイモーダルITが取り上げられ、このモデルは、会社からの革新的なITプロジェクトへの支持を得るために役立つという議論が出た。
バイモーダルITのビジネスケース
ヘアケア企業ghdのグローバル技術ソリューションマネージャーSpencer Hudson氏は、CIOは依然として社内で新たなプロジェクトへの支持を得るのに苦労していると述べている。同氏の「上司」は、今では事業部門の幹部もテクノロジの重要性を理解していると話しているそうだが、Hudson氏自身の視点から見ると、多くの事業部門のマネージャーはまだテクノロジを単なるサービスだと考えている。
「きっとこの時期になれば、経営チームもITを活用する方法を理解してくれるようになるだろうと期待していた人もいただろうが、必ずしもそうはなっていない」とHudson氏は言う。「ITを理解している若い経営者や上級マネージャーがいることもあるが、実務者とユーザーの知識にはギャップがある。多くの場合、ITの重要性を理解してもらうのは難しい」
幸いにしてバイモーダルITは、適切に使いさえすれば、事業部門がITの価値を理解し、使っているテクノロジを最大限に活用できるようになるために役立つかもしれない、とHudson氏は言う。運用を継続しながら、同時に変化のためのビジネスケースを設けることで、CIOの考え方を周囲に理解してもらえる可能性がある。
「CIOは何かを起こす必要がある。信頼を獲得するためには、十分な数のプロジェクトを成功させる必要がある。ほかに方法はない。物事を正しく進めれば、事業部門はコースを外れることを認めてくれる」とHudson氏は言う。
「ITの世界では、抽象度が上がり、細かい技術的な問題は重要ではなくなってきている。ビジネスの課題を解決するソリューションを生み出すことが目標であることを考えれば、これはあるべき姿だと言える。私は、さらに抽象化が進み、技術よりもビジネスの成果に力を入れられるようになることを望んでいる」(Hudson氏)